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4月12日の日本の昔話
  
  
  
  きんぴかのやかん
 むかしむかし、あるお寺のゆかしたに、はげダヌキがすんでいました。
   ほかのタヌキより、頭の毛がうすいことから、はげダヌキとよばれていたのですが、なんとこのタヌキは、ひとだすけがだいすきなのです。
   こまっているひとがいると、もう、ジッとしていられません。
   すぐに、こまっているひとをたすけるのです
   あるとしの、くれのことでした。
   はげダヌキが、お寺のまえのとうふやへ、あぶらあげをもらいにいくと、主人がためいきをついています。
  「よわったなあ。おかねがなくては、としがこせん。とうふをつくるマメもかえん・・・」
   これをきいたはげダヌキは、
  「おいらに、いいかんがえがある。しんぱいしなさんな。いつもおいしいあぶらあげをいただいているのだがら、おんがえししなくちゃ」
  と、さっそく、きんぴかのやかんにばけました。
  「おおっ、これはみごとなやかんだ。ぜひとも、わしにゆずってくれ」
   やかんはまもなく、とおりかかった金もちのだんなにかいとられました。
  「ほんとうに、すばらしいやかんだ。だが、みがけばもっと、ひかるかもしれんぞ」
   さっそくだんなは、やかんみがきをはじめました。
   はげダヌキはくすぐったいやら、いたいやら、でも、ばれてはいけないので、じっと、がまんしていましたが、みがかれすぎて、うすい頭の毛を、ツルツルにされてしまいました。
  (ああっ、たいせつな頭の毛が・・・)
   これいじょう、みがかれてはたまりません。
   だんなが手をはなしたすきに、とっとこにげだして、お寺のゆかしたにかくれました。
  「こんなツルツル頭では、はずがしくて、であるけやしない。でも、とうふやがぶじにとしをこせたから、いいや。よかった、よかった」
   それがらしばらく、はげダヌキは毛が生えるまで、どこにもすがたをみせなかったということです。
おしまい