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10月26日の日本の昔話
  
  
  
  キツネのしかえし
 むかしむかし、ある村に、げんたという、わかいおひゃくしょうがいました。
   ある日、畑しごとがおそくなり、山道をひとりでかえっていくと、とつぜん目のまえに、月のひかりをあびたうつくしいむすめさんがあらわれて、
  「こんばんは、げんたさん」
  と、スズをころがすようなやさしい声で話しかけ、ニコニコとほほえんでいます。
  (こんなところにむすめさんがいるはずはない。きっとキツネが、わたしをだまそうとしているのだ)
   げんたはそう思って、むすめさんの手をグイッとつかみました。
   そしてよく見ますと、やっぱり手には、バサバサと毛がはえていました。
   キツネとわかってしまえば、もうこわくはありません。
  「やい、キツネ! こんなことで、おれをばかせると思うのか。もう二どといたずらができないようにしてやろう」
  と、げんたはいいました。
   するとむすめは、
  「コーン、コーン。どうか、ゆるしてくださいませ」
  と、ないてあやまりました。
   そこでげんたは、コツンと、げんこつでむすめのあたまをたたいてからはなしてやりますと、白いキツネのすがたになって、林の中へにげていきました。
   それからいく日かたったあるばん。
   げんたが友だちの家へいってのかえり道です。
   川にそって夜道をテクテクあるいて、いつもわたっているはしのところまでやってきました。
  「うん? ・・・あれ?」
   げんたは、目をパチクリさせました。
   いつもは一つだけのはしが、こんやは二つもあります。
   ビックリしてよく見なおしますと、こんどは三つのはしになりました。
   そっくりおなじはしが、三つもならんでいるのです。
  「はて、どのはしをわたればいいのかな?」
   げんたは三つのうちのまん中のはしへ、そっと足をかけました。
   そして、ソロリ、ソロリと、あるきますと、
  「あっ!」
   そのはしはたちまちきえて、げんたはドボーンと川の中へおちてしまいました。
   そのとき、
  「コーン、コーン」
  と、おかしそうにキツネのわらい声がしました。
   このあいだげんたに見やぶられたむすめのキツネと、そのなかまたちのしかえしだったのです。
おしまい