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1月15日の小話
かんびょう
  「おいおい、八こうのやつが病気だってさ。みんなでおみまいってやろうじゃないか」
   八五郎(はちごろう)の友だちが、二、三人集まって、おみまいにいくことになりました。
  「よう、ぐあいはどうだ? 安心しなよ、おれたちがかん病してやるからな」
   友だちがいうと、八五郎はうれしがって、
  「おお、よくきてくれた。まあ、にぎやかに話でもしていってくれ」
  「そうかい、それじゃあ、何か用があったら、声をかけろよ。えんりょすることはないぞ」
  と、いって、友だちは、にぎやかに話などをしていましたが、そのうちに花ふだがはじまってしまいました。
   勝ったの、負けたのとやっているところへ、八五郎が声をかけました。
  「もしもし、水を一ぱいくだされ」
  「・・・」
  「もしもし、すみませんが、お水を・・・」
  「ああ、いまやるぞ」
   友だちは、声ばっかりで、いつまでたってもきてくれません。
   たまりかねた八五郎が、ふらふらとおきてきたのを、友だちがみつけ、
  「これ、どこへいくのだ、ねていないとあぶないぞ」
  「水を飲みに」
   すると、友だちは、
  「おお、それならついでに、おれにも、水を持ってきてくれ」
  「おお、おれはさけだ。さけを持ってきてくれ」
  「おれにはまんじゅうだ。なければ、買ってきてくれ」
  「・・・・・・」
 この様な友だちを、悪友といいます。
おしまい