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4月16日の小話
竹の刀
   神田(かんだ)のあたりを、よっぱらいが、あっちへふらふら、こっちにふらふら、あるいておりました。
   それをみつけた子どもたちが、
  「やーい、よっぱらい。やーい、よっぱらい」
   などと、わらいますと、腹を立てたよっぱらいが、
  「なっ、なんだ? よっぱらいだと。うぬ、おれは、よっぱらっちゃおらんぞ。おれの金で、おれが飲むのに、なにが悪いんだ」
  「なんだい、よっぱらい。のろま。うすのろ。やーい」
  「ええい、もうがまんならん。やい、子ども。まっぷたつにするから、かくごしろ!」
   よっぱらいが、わきざし(「わきざし刀」の略で、左腰にさすように作った短い刀)をぬきにかかると、
  「わーい。きれるものなら、きってみろい。ぬけやーい、ぬけやーい」
  と、いうのにつられて、わきざしをぬけば、これが、竹でできた刀でしたから、たまりません。
   子どもたちは、ちょうしにのって、
  「びんぼうざむらい、どうせ本物は質屋にうったんだろう。それできれるなら、きってみろい。やーい、やーい」
  と、わらうと、よっぱらいは、
「なに、おまえらに、かたっぱしから、とげを立ててやるぞ」
おしまい