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4月19日の小話

なりたがる
   四条河原(しじょうかわら)の橋の下で、こじき(→詳細)たちがおしゃべりをしています。
  「ちかごろ、米や油がたいへん高くなって、町のひとはこまっているそうな」
  「そうらしいな。かわいそうに」
  「それにくらべりゃ、こちとら、米を買ったり、油を買ったりすることもない」
  「そうだそうだ。橋の下の家だから、だれにも家賃(やちん)などはらわなくてもすむしな。なんと、気楽なことではないか」
   すると、中のひとりのこじきが、口に手をあてて、
「しーっ、大きな声でいうな。ひとがきくと、なりたがるだろ」
おしまい