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4月24日の小話
ひろった手紙
   若い男がふたり、つれだって歩いていると、道の上に手紙がおちていました。
   ひとりの男がそれをみつけて、
  「これは、ちり紙のかわりによい」
  と、ひろって、ふところに入れようとすると、となりにいたもうひとりの男が、
  「たのむ。その手紙を、おれにくれ」
  「ああ、いいが、いったい、こんなもの、なんにするのだ」
  と、ひろった男がきくと、
  「しばらく田舎(いなか)へ手紙をやっていないので、それをもらって、かわりに出すのさ」
  「しかし、他人の手紙だぞ。そんなんで大丈夫か?」
「なに、心配するな。どうせ田舎の人間は、だれも字が読めないんだから」
おしまい