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7月4日の小話

ないしょ話
   天気のよい日、お百姓が畑で、何やらまいておりました。
   ちょうど、とおりかかった、となり村の五助(ごすけ)どんが、
  「いい天気だね。して、なにをまいているんだね」
  と、はなしかけますと、お百姓は、あわてて五助どんのそばにより、
  「しーっ、声が高い」
  と、いいます。
   さては、ひとにいわれぬ、世にもめずらしいものの種でもまいているのだろうと、小さな声で、
  「それで、なにをまいている」
  と、きくと、お百姓は、ざるの中をそおっとみせて、
「それがな、ハトの大好きなだいずなのじゃ。だから、ハトにきかれては、まずい」
おしまい