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7月22日の小話
うなぎのてんのぼり
   江戸っ子の三吉(さんきち)が、ある日、川へつりに出かけて、うまいことに、大きなうなぎ(→詳細)をつり上げました。
  「こいつは大物だ」
   三吉は、さっそくうなぎの口のはりをぬいて、かた手でつかもうとすると、うなぎは、ぬるっと上へ逃げます。
  「逃げすもんか」
   いそいで、もうかたいっぽうの手でつかむと、また、上へぬるりと逃げます。
   あわてて、またもういっぽうの手でつかまえると、また、ぬるりと上へ。
   上へ上へと、うなぎが逃げるので、三吉も、上へ上へとうなぎをつかまえていると、だんだん、うなぎにつられて、空にのぼっていってしまいました。
   それから、たちまち一年という月日がたってしまいました。
   あれっきり、三吉は帰ってきません。
   長屋の者たちが集まって、
  「三吉は、もう死んじまったろう」
  と、そうしきを出しているところへ、空から手紙が、ひらひらとおちてきました。
   よんでみると、
  「去年の今日、うなぎといっしょに天にのぼったが、まだ、うなぎをおいかけ、上へ上へとのぼっている。三吉より」
  と、あり、すみっこのほうには、
  「三吉は、うなぎをつかんでいて手がはなせないから、代筆(だいひつ→本人の代わりに書くこと)をした。天のカミナリ(→詳細)より」
と、書いてありました。
おしまい