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9月19日の小話

ウマのクソが三つ
   むかし、金持ちのじいさまがいました。
   じいさまには三人のむすこがいますが、自分の死んだあと、だれか、しっかりした者にあとをゆずりたいとおもって、ある日、じいさまは、むすこ三人呼んでいいました。
  「おまえたちは、この世で何が一番欲しいんだ?」
   すると、長男(ちょうなん)は
  「ウマのクソが、三つもあればいい」
   じいさまは顔しかめると、次男(じなん)にききました。
  「日本国中に、大判小判をしきつめてえ」
   じいさまは、「感心(かんしん)、感心」とよろこんで、今度は三男(さんなん)にきいてみた。
   三男は、
  「海から水引いて、日本国中を田んぼにしたいもんだ」
   じいさまは、「これも感心だ」とほめながら、長男に向かってこういった。
  「おまえ、さっき何てぬかした。ウマのクソ三つ欲しいとは何ごとだ」
   すると長男は、
  「日本国中に、金しきつめて、だれがその金使うんだ。日本国中広い田んぼにするといっても、いったいだれが、その田んぼをたがやすんだ。そんなばかげたこと言うやつの口さ、ウマのクソ1つづつ食わせ、それをきいてよろこんだ人の口にも、1つ入れたい」
   それをきいたじいさま、
「なるほど、やっぱり、長男は長男だけのことはある」って、大そう感心したそうな。
おしまい