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9月13日の日本民話
うたう、おなか
北海道の民話
むかしむかし、アイヌの村に、パナンペという男の子が住んでいました。
パナンペはとてもいい子で、お父さんやお母さんのいうことをよく聞いて、家の手伝いをしました。
ある日のことです。
「きょうは天気がいいから、山へたきぎを取りに行こう」
パナンペはオノを持って、山へ行きました。
山はあたり一面まっ白につもった雪に、お日さま光でキラキラとかがやいています。
雪をかぶった木の枝では、小鳥がさかんに鳴いています。
「ああ、なんてきれいな歌だろう。でもいったい、なんていっているんだろう?」
パナンペは、耳をすましました。
すると小鳥は、よけいに声をはりあげました。
♪カニチョロチョロ ピイツンツン
♪コガネチャラチャラ ピイツンツン
♪シロガネチンチン ピイツンツン
「カニチョロチョロって、なんのことだろう?」
小鳥はくりかえしくりかえし、鳴いています。
パナンペは口をポカンとあけて木の上を見あげ、夢中になって聞いていました。
するとそのとき、小鳥が木の枝からパッと飛びたちました。
そして小鳥はなんと、パナンペの大きくあけた口の中へ飛びこんでしまったのです。
パナンペはビックリして、思わず口の中の小鳥を飲みこんでしまいました。
「あっ、小鳥をのみこんじゃったぞ! おなかがいたくなりはしないかな?」
パナンペは心配になって、そっとおへそのあたりをおさえてみました。
するとおなかの中から、きれいな小鳥の歌が聞こえてきたのです。
「わあ、たいへんだあ!」
パナンペは、家へ飛んで帰っていいました。
「お父さん、お母さん、ぼくのおなかの中で小鳥が歌を歌うんだよ。ほら」
おへそをおさえると、
♪カニチョロチョロ ピイツンツン。
と、小鳥が歌いだしたので、お父さんもお母さんもビックリ。
「こりゃ、いったいどうしたことじゃ?」
パナンペの歌うおなかは、たちまち評判(ひょうばん)になりました。
「ちょっと、おへそをおしておくれ」
パナンペがおへそをおすと、小鳥の歌が聞こえてきたので、みんなはとても感心しました。
これを見ていた友だちのペナンペは、パナンペがうらやましくてたまりません。
「ふん。ぼくだって、それくらいできるさ」
と、ばかり、パナンペのまねをして、おへそをギュッと力いっぱいおしました。
すると、おしりから、
「ブーーーーッ!」
と、大きなおならが出てきたのです。
「ペナンペのは、ずいぶんとへんな小鳥の歌だね。ハハハハハハハッ」
みんなが大笑いするので、ペナンペははずかしくなって、こそこそと逃げだしました。
おしまい