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10月15日の日本民話
炭焼きじいと古ダヌキ
徳島県の民話
むかしむかし、ある山里(やまざと)にすむ炭焼きのおじいさんが、山の中にある炭焼き小屋で仕事をしていました。
ある夕方の事です。
とつぜん大蛇(だいじゃ)が現れて、炭焼きのおじいさんに食らいつくと、口にくわえたまま山奥に逃げこんでいきました。
知らせをきいた里の人たちは、みんなで炭焼きのおじいさんの行方(ゆくえ)をさがしました。
すると次の日、草むらの中に、おじいさんが倒れているのを見つけたのです。
二日近くも飲まず食わずだった炭焼きのおじいさんは、死人のようにグッタリとしていました。
大蛇はどこへいったかわかりませんが、とにかく命は助かったので、みんなはホッとしました。
そして家まで運んで手当てをすると、炭焼きのおじいさんはやっと元気をとりもどして、こんな話しをはじめたのです。
炭焼きのおじいさんは、大蛇にやぶの中につれこまれると、大蛇は炭焼きのおじいさんを口からはなして、目の前で美しい娘に姿をかえました。
そして、
「こちらへ、こちらへ」
と、手まねきしたのです。
さそわれるままに、炭焼きのおじいさんはついていきました。
娘は見えかくれしながら、いつのまにかいなくなってしまいました。
それから、どこをどう歩いていたのかわかりません。
水も飲まず、なにも食べずに山の中をうろつきまわっているうちに、疲れと空腹で動くことができなくなりました。
そしてそのまま、草むらの中で倒れてしまったというのです。
「なさけねえこった。古ダヌキに化かされて、こんなところで死ぬとは・・・」
と、気を失ったところを、里の人たちに助けられてというのです。
徳島にすむタヌキたちは、むかしから手のこんだ化かしかたをして、人をだましてきたという事です。
おしまい