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4月21日の世界の昔話
  
  
  
  獲物をとられたキツネ
  ハリスの童話 → ハリスの童話詳細
 むかしむかし、ある森に、イタズラ好きのウサギがいました。
   ある日のこと、キツネは狩りに出かけました。
   一日じゅう野原や山をかけ回って、ふくろにいっぱいのえものをつかまえました。
  ♪おてんとさまは、ピッカピカ
  ♪野原の風は、そーよそよ
  ♪おいらの袋は、いっぱいのぱい
   キツネは、とてもごきげんです。
   それを見たウサギは、ニヤリとわらいました。
  「しめしめ、あのふくろのえものをよこどりしてやろう」
   ウサギはピョンピョンと飛び出して、道のまん中にゴロリと寝ころがると、死んだふりをしていました。
  「うん? ・・・ありゃ、こんな所にウサギが死んでる」
   ウサギを見つけたキツネは、舌をペロリと出しました。
  「まるまるふとっていて、うまそうなウサギだな。でも、きょうはふくろにいっぱいえものがあったし、死んだウサギなんかいらないや」
   キツネはウサギをころがしたまま、スタスタといってしまいました。
   ウサギはヒョッコリ起きあがると、大急ぎで森の中を先回りしてキツネの先へ出ました。
  「よいしょ」
   ウサギは、また死んだふりをして、道のまん中へ寝ころがりました。
   しばらくして、キツネがやってきました。
  「おや? またまたウサギを見つけたぞ」
   キツネは舌をペロリと出すと、しばらく考えました。
  「きょうは、いっぱいえものがあるけど、このウサギをおいてかえるのももったいないな。これはあしたの晩ごはんにしようかな。・・・そうだ! さっきのウサギは、あさっての晩ごはんにしよう」
   そう思いつくと、キツネはえものの入ったふくろを地面に置きました。
  「ひき返して、さっきのウサギもひろってくるとしよう」
   ふくろを置いたままキツネが走っていったのを見て、ウサギはヒョッコリと起きあがりました。
  「うまくいったな。ではキツネくん。これはありがたくちょうだいするよ」
   ウサギは、えものの入ったふくろをかついで、うちへ帰りました。
   さて、キツネはというと、
  「おかしいな。死んだウサギが二匹ともいなくなったぞ。それに、えものの入ったふくろも消えちまった」
   キツネは首をかしげると、トボトボと家に帰って行きました。
おしまい