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世界のとんち話 第6話
かしこいお医者のやせ薬
タンザニアの昔話 → タンザニアの国情報
むかしむかし、あるところに、ふとった女の人がいました。
あまりにもふとりすぎて、もう、歩くのがやっとというありさまです。
女の人はどうにかしてやせたいと思って、ヨタヨタと、お医者のところへいきました。
「先生、わたしはドンドンふとるばかりで、いまにはれつしそうです。ぜひ、やせるお薬をください」
女の人は、いっしょうけんめいにたのみました。
「きょうは、しんさつ代だけはらっておかえりなさい。あしたまた、きてください」
お医者は高いお金をとって、女の人をかえしました。
あくる日、女の人はお医者のところヘいきました。
お医者は、女の人の頭のてっぺんから足の先までながめました。
それからお医者は、おもおもしくはなしだしました。
「おくさん。きのうわたしは、2万1783さつの書物をよみ、1800万の星をうらなってみました。それによると、あなたはあと七日しか命がありません。もうじき死ぬのに、くすりもいらないでしょう。お帰りになって死ぬときをおまちなさい」
「!!!!!!」
ふとった女の人は、それを聞いてガタガタふるえだしました。
帰るとちゅうも帰ってからも、死ぬことばかり考えつづけました。
朝から晩まで、あとなん日、あとなん時間生きていられるかと、そればかり考えつづけました。
なんにも、のどを通りません。
夜もねむれません。
女の人は日ましに、いいえ、一時間ごとにやせていきました。
七日間がすぎました。
女の人はかくごをきめると、しずかに横になって、死ぬのをまちました。
けれども、いっこうに死にません。
八日すぎても、九日すぎても、やっぱり死にません。
十日目になると、とうとう女の人はがまんできなくなって、お医者のところへかけつけました。
すっかりやせた女の人は、らくらくと走ることができました。
「あなたは、なんてへたくそなお医者なんでしょう! あんなにお金をとっておきながら、人をだましたのね! 七日したら死ぬって、おっしゃいましたけど、もう、きょうは十日目ですよ。このとおり、ピンピンしているじゃありませんか!」
女の人は、ものすごいいきおいでもんくをいいました。
お医者は、おちつきはらって聞いていましたが、ふと、女の人に聞きかえしました。
「ちょっとうかがいますが。あなたはいま、ふとっていますか? やせていますか?」
女の人は、こたえました。
「やせましたとも。死ぬのがおそろしくて、食べ物ものどを通りませんでしたからね」
すると、お医者はいいました。
「そうでしょう。その、おそろしいと思う気持が、やせぐすりだったのですよ。これでもあなたは、わたしをへたくそな医者だと、いわれるのですか?」
「あっ・・・」
女の人は気がついて、笑いだしました。
おしまい
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