頭がよくなる 世界のとんち話 ☆福娘童話集☆ 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
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世界のとんち話 第6話

かしこいお医者のやせぐすり

かしこいお医者のやせ薬
タンザニアの昔話 → タンザニアの国情報

♪音声配信(html5)
朗読 : トルネン  stand.fm 「癒しの森 朗読セラピー」

 むかしむかし、あるところに、ふとった女の人がいました。
 あまりにもふとりすぎて、もう、歩くのがやっとというありさまです。
 女の人はどうにかしてやせたいと思って、ヨタヨタと、お医者のところへいきました。
「先生、わたしはドンドンふとるばかりで、いまにはれつしそうです。ぜひ、やせるお薬をください」
 女の人は、いっしょうけんめいにたのみました。
「きょうは、しんさつ代だけはらっておかえりなさい。あしたまた、きてください」
 お医者は高いお金をとって、女の人をかえしました。
 あくる日、女の人はお医者のところヘいきました。
 お医者は、女の人の頭のてっぺんから足の先までながめました。
 それからお医者は、おもおもしくはなしだしました。
「おくさん。きのうわたしは、2万1783さつの書物をよみ、1800万の星をうらなってみました。それによると、あなたはあと七日しか命がありません。もうじき死ぬのに、くすりもいらないでしょう。お帰りになって死ぬときをおまちなさい」
「!!!!!!」
 ふとった女の人は、それを聞いてガタガタふるえだしました。
 帰るとちゅうも帰ってからも、死ぬことばかり考えつづけました。
 朝から晩まで、あとなん日、あとなん時間生きていられるかと、そればかり考えつづけました。
 なんにも、のどを通りません。
 夜もねむれません。
 女の人は日ましに、いいえ、一時間ごとにやせていきました。
 七日間がすぎました。
 女の人はかくごをきめると、しずかに横になって、死ぬのをまちました。
 けれども、いっこうに死にません。
 八日すぎても、九日すぎても、やっぱり死にません。
 十日目になると、とうとう女の人はがまんできなくなって、お医者のところへかけつけました。
 すっかりやせた女の人は、らくらくと走ることができました。
「あなたは、なんてへたくそなお医者なんでしょう! あんなにお金をとっておきながら、人をだましたのね! 七日したら死ぬって、おっしゃいましたけど、もう、きょうは十日目ですよ。このとおり、ピンピンしているじゃありませんか!」
 女の人は、ものすごいいきおいでもんくをいいました。
 お医者は、おちつきはらって聞いていましたが、ふと、女の人に聞きかえしました。
「ちょっとうかがいますが。あなたはいま、ふとっていますか? やせていますか?」
 女の人は、こたえました。
「やせましたとも。死ぬのがおそろしくて、食べ物ものどを通りませんでしたからね」
 すると、お医者はいいました。
「そうでしょう。その、おそろしいと思う気持が、やせぐすりだったのですよ。これでもあなたは、わたしをへたくそな医者だと、いわれるのですか?」
「あっ・・・」
 女の人は気がついて、笑いだしました。

おしまい

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