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7月27日の世界の昔話
  
  
  
  ネコとヒョウ
  中国の昔話 → 中国の国情報
 むかしむかし、ネコとヒョウはおなじ家に、なかよくくらしていました。
   ネコはたいへんかしこくて、ヒョウのできないことも、みんなできました。
   ですからいつも、ヒョウにいろいろと教えてやっていました。
   ある日のこと、ネコがいいました。
  「人間には火というものがあって、ものを煮(に)たり、焼いたりできるそうだ。ぼくたちも、火をもらってこようじゃないか」
  「うん、それはいい考えだ」
  と、ヒョウはさんせいしました。
   そこでネコは、人間の住んでいる村まで、火をもらいにいきました。
   トン、トン、トン。
  「どなたですか?」
  「火を、わけてください」
  と、ネコはたのみました。
   おかみさんが、かまどの火を、すこしわけてくれました。
   そのとき、かまどの上からごはんの煮える、おいしそうなにおいがただよってきました。
  (ああ、うまそうなにおいだ。たべたいな)
  と、ネコは思いました。
   けれども家ではヒョウがまっていることを考えて、まず、火を持って帰ることにしました。
   ところが、自分の家のかどぐちまできたとき、また、さっきのごはんのことを思いだしました。
   そこでもらってきた火をもみ消して、もういちど、火をもらいにいくことにしました。
   さっきの家にもどっていきましたが、まだ、ごはんは煮えていません。
   しかたがないので、
  「あのう、火がとちゅうで、消えてしまいましたので」
  と、いって、もう一度、火をもらって帰ってきました。
   けれども、山の家のかどぐちまでくると、また、ごはんのことを思いだしました。
   そこでまた、火をもみ消して、もういっペんさっきの家にもどっていきました。
   こうして、なんどもなんどもおなじことをくりかえしているうちに、やっと、ごはんができあがりました。
   やさしいおかみさんは、
  「さあ、おまえもおあがり」
  と、いって、ごはんをほんのすこし、わけてくれました。
   ネコは、はじめてごはんをたべました。
   そのおいしいこと。
  「ああ、人間はえらいなあ。火をつかって、こんなおいしいものを煮て、たべるんだもの」
  と、すっかり感心してしまいました。
   そこで火は持たずに、自分の家へかけもどって、ヒョウにいいました。
  「人間はえらいもんだよ、ぼくなんかより、ずっとずっといろんなことができるんだ。だからぼくは、これからは人間のところへいって、くらすことにきめたよ。きみとはもう、おわかれだ」
  「いやだ!」
  と、ヒョウはいいました。
   そして、ギロリと目をむきました。
   ネコはりこうで、なんでもできましたが、ヒョウのほうがからだも大きくて、力もつよいのです。
   ですからヒョウにはんたいされて、ネコはこまってしまいました。
   どうしたら、ヒョウのやつに承知させることができるだろう。
   ネコは、いっしょうけんめい考えました。
   そのうちに、ふと、いいことを思いつきました。
   ネコは、わざとニコニコしながら、
  「そうそう、ヒョウくん。ぼくはきみに、まだ木のぼりを教えてあげていなかったね」
  「うん、まだだ」
  「じゃ、これから教えてあげよう」
  「ほんとうかい」
   ヒョウは喜んで、ついてきました。
   ネコはヒョウに、木のぼりを教えました。
   ヒョウはネコのあとから、えっちらおっちら、高い木の上にのぼりました。
   するとネコは、いきなりその木から、フジのつるをめがけてパッととびうつりました。
   そしてそのまま、スルスルとすべりおりると、人間の住む村へかけていってしまいました。
   さて、ネコはヒョウに木のぼりだけ教えて、木からおりることは教えなかったので、ヒョウはおりることができず、こまってしまいました。
   おなかがすいて、グーグーなってきました。
   それでも、どうすることもできません。
   そのうちに、とうとうがまんできなくなって、ネコのやったように、フジのつるをめがけてとびつきました。
   ところがとびついたとたんにつるがきれて、ヒョウはまっさかさまに地面におちてしまいました。
   そのときヒョウは、首をいためてしまいました。
   ですからヒョウは、いまでも道を歩くとき首をあげることができませんし、木のぼりは上手でも、おりるのが下手なのです。
おしまい