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      福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
       
        
       
開聞岳(かいもんだけ)の岩石男(がんせきおとこ) 
鹿児島県の民話 → 鹿児島県の情報 
      
      
       むかしむかし、開聞岳(かいもんだけ→
 鹿児島県の薩摩半島南端の火山
)に、まっ黒な大男が住んでいました。 
 大男はとても力が強く、村に来ては田畑を荒らしました。 
 困った村人たちはあちこちに大男退治を頼みましたが、誰もが怖がって大男退治を引き受けてはくれません。 
 
 そんなある日の事、その大男が村娘の一人をさらって行ったのです。 
 これを聞いた一人の侍が、 
「田畑を荒らすだけならともかく、娘をさらうとは許せん!」 
と、大男退治に出かけました。 
 
 しかし次の朝、侍は折れた刀をつえに、ボロボロの姿で帰って来ました。 
 村人たちが侍を介抱すると、侍はくやしそうに言いました。 
「娘は、山のほら穴の中で大男と一緒にいた。 
 娘を助けようと大男に戦いを挑んだが、大男の体は岩の様に固く、刀もわたしもこのざまだ。 
 しかしこのまま引き下がっては、武士の名折れ。 
 この次こそは、必ず退治してくれよう」 
 
 その夜、さらわれた娘が、ひょっこりと村に戻ってきました。 
「わたしは今、山で大男の妻にされています。 
 あの大男は、溶岩から生まれた岩石男です。 
 体は岩の様に固く、刃物ではどうする事も出来ません。 
 ただ、岩石男から、こんな話を聞いたのです。 
 溶岩が固まる時、背中の左の肩の下に榊(さかき)の葉がついて固まったので、そこだけが人間の様にやわらかいと。 
 岩石男が寝ているすきに、岩石男の着物に目印をつけました。 
 もうすぐ岩石男が目を覚ますので、わたしは帰ります。 
 お願いです、どうか岩石男を退治してください」 
 娘はそれだけ言うと、急いで山へ帰って行きました。 
 それを聞いた侍は、傷だらけの体で立ち上がりました。 
「よし、たとえ一点でも、刀の通用するところがあれば勝てるだろう。今後こそ退治して、娘を救い出してくれよう」 
 侍は次の朝早く、折れた刀を持って山に出かけました。 
 
 そして侍は決死の戦いの末に岩石男を退治して、娘を無事に連れて帰ったという事です。 
      おしまい 
         
         
        
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