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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
星を落とす 
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて 
      
      
       むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
 ある日の事、吉四六さんが、村人たちに向かって言いました。 
「今夜、わたしは空の星をほうきではいて落とすから、みんなで拾いに来て下さいな」 
「何だって? 空の星をほうきで落とす。はん。馬鹿馬鹿しい事言うな」 
「じゃあ、来なくてもいいですよ。わたしが一人で落とすから。あの空の星はみんな金で出来ているから、わたし一人で拾ってお金持ちになるから。後でうらやましがったって知らないから」 
 そう言う吉四六さんの言葉に、村人たちもついつい欲が出て、 
「それじゃあ、試しに行ってみようか?」 
「そうだな。万が一と言う事があるし」 
と、夜になると吉四六さんの家の周りに集まってきました。 
 しかし、肝心の吉四六さんがどこにもいません。 
「おかしいな、吉四六さんはどこへ行ったのだろう?」 
「おーい。吉四六さーん!」 
 誰かが呼んでみると、 
「おーい。ここだ」 
と、頭の上で答える声がします。 
 見てみると吉四六さんが屋根の上に登っていて、手に長い竹ぼうきを持っていました。 
「吉四六さん、星はまだ落ちないのかい?」 
「まあ、そんなに急ぐもんじゃあないよ。もう少し、待ちなさい」 
 そう言って吉四六さんは、空を見上げました。 
 暗い空には、キラキラとたくさんの星が光っています。 
「ところで吉四六さん。あんな高い空まで、ほうきが届くのかい?」 
 みんなが笑いながら言うと、吉四六さんはまじめな顔で、 
「届くとも、今にきっと、金の星をはたき落としてやるからな」 
と、言いながら、ほうきを振り回しましたが、もちろん、星は一つも落ちて来ません。 
「あれ、おかしいな?」 
 吉四六さんは、少し慌てました。 
「ほれ、ほれ、落ちろ! はやく落ちろ! すぐに落ちろ!」 
 怒鳴りながらほうきを振り回す吉四六さんに、村人の一人が言いました。 
「だから駄目だって。もう止めなよ。屋根から落ちたら怪我をするよ」 
「何、そう簡単にあきらめるものか。見ていろ!」 
 吉四六さんは、むきになってほうきを振り回しました。 
 するとその時、空の星が1つ、スーッと流れて、どこかへ落ちていきました。 
 それは、流れ星です。 
 でも、吉四六さんは、 
「よし、やったぞ!」 
と、大きな声で大喜びです。 
「そら、そら、星が落ちただろう。わたしがほうきで落としたんだ。みんな早く行って、拾っておいで」  
      おしまい 
        
         
        
       
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