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      福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
       
         
       
けんかがうつる 
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて 
      
      
       むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
 その吉四六さんの隣の家の夫婦は、いつもけんかばかりしています。 
「大体、お前がだな!」 
「何よ! あたしのせいにするの!」 
 こんな風に大声を出して怒鳴り合うし、二人して物を投げつけるわで、それは大変な騒ぎです。 
 そこである日の事、吉四六さんは隣との間に、垣根をこしらえ始めたのです。 
 それを、たまたまやって来た庄屋さんが見て言いました。 
「よう、吉四六さん。一体何をしてるのかね?」 
 すると吉四六さんは、 
「何って、見れば分かるでしょう。垣根を作っているんですよ」 
「それは分かるが、なぜ?」 
「それはもちろん、隣の夫婦げんかが、こっちにうつらん様にですよ」 
「ああ、この夫婦な。しかし、けんかという物は、うつる物じゃない。だから垣根など作っても無駄じゃ」 
「いいや、うつりますよ」 
「うつらんて」 
 吉四六さんも庄屋さんも、だんだん声が大きくなってきました。 
「だから、うつらんといっているだろう!」 
「うつりますとも!」 
「うつるもんか!」 
「うつるとも!」 
「うつらん!」 
「うつる!」 
 そこで、吉四六さんが言いました。 
「ほら、けんかがうつったでしょう」 
      おしまい 
         
         
        
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