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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
ウシのはなぐり 
      
      
       むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
 きっちょむさんは、あまりお金持ちではありませんが、お金がなくなってくると、ヒョイと、いい知恵が浮かんでくるのです。 
 ある日の事、きっちょむさんは畑仕事をしながら、町へ行く通りがかりの人を呼び止めては、 
「すまんが、町のあらもの屋で、ウシのはなぐりを買ってきてほしいんじゃ。数は、いくつあってもいい。値段は、なんぼ高くてもかまわん」 
と、変な事を頼みました。 
 みんなが引き受けてくれましたが、帰ってきて、 
「あいにく、売り切れとるそうじゃ。ウシの鼻につなを通す、はなぐりの輪など、めったに売れるもんではないから、ふだんはおいてないそうじゃ」 
「おれもずいぶん探したが、一つもなかった。『今日はいく人も、はなぐりを欲しいという人がきた。こんな事なら、たくさん、しいれておけばよかった』と、くやしがっとったわい」 
と、口々にいいました。 
「それはどうも、すまん事じゃった」 
 きっちょむさんは、ガッカリするどころか、喜びながら家に帰りました。 
 さて次の朝、きっちょむさんは、作ってためておいたウシのはなぐりを、町へかついで行って、 
「ウシのはなぐりはいりませんか?」 
 町中のあらもの屋をまわりました。 
「これはいいところにきてくれた。いくつでもおいていってくれ」 
 昨日、もうけそこなっているので、どこのあらもの屋でも、喜んでしいれてくれました。 
「さあ、これで、昨日のお客が来てくれれば、ひともうけできるぞ」 
 あらもの屋は、もうけのそろばんをはじきましたが、ウシのはなぐりは、さっぱり売れません。 
 もうかったのは、きっちょむさんだけでした。 
      おしまい 
        
         
        
       
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