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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
小槌(こづち)の柄(え) 
大分県の民話 → 大分県情報 
      
      
       むかしむかし、大分のある田舎に、仕事もしないで遊んでばかりいる男がいました。 
 ある日の事、男が木陰で寝ていると、働き者のアリがやってきて言いました。 
「お前、そうして寝ていても、食べる物は集まらんじゃろう。早く起きて働け」 
 すると男は、 
「ばか言え、こんなに暑いのに、働くなんてごめんじゃ」 
 男がそう言うと、アリはしばらく考えてから、こう言いました。 
「そんなら、ええことを教えてやろう。この山奥のお宮さんに、大黒さんがいる。その大黒さんは、振れば何でも欲しい物が出る打出(うちで)の小槌(こづち)という物を持っておるから、それを借りて来たらどうじゃ。そうすれば、働かんで食えるぞ」 
「おおっ、振るだけで何でもか! そいつはありがたい」 
 男は起き上がると、喜んで大黒さんのところへ行きました。 
 そして、 
「大黒さん、大黒さん、打出の小槌とやらをわしに貸してくれんか。それで食い物を出そうと思うんじゃ」 
と、頼みました。 
 すると大黒さんは、 
「貸してやってもええが、あいにく小槌の柄が折れとってのう。その柄は普通の物では役に立たん。握るところがくぼんで黒光りするような、使い込んだクワの柄でなければならんのじゃ」 
と、言うのです。 
 男はそれを聞くと、その日から毎日毎日クワを握って、 
「まだ、くぼまんか。まだ、くぼまんか」 
と、言いながら、畑仕事を始めたのです。 
 こうして一年たち、二年たちと、何年もまじめに働いているうちに、食べ物がだんだんと家にたまってきたのです。 
 ある日のこと、大黒さんが山からおりてきて、 
「くぼんで黒光りする柄は、まだ出来んのか? 出来たらすぐに、打ち出の小槌を貸してやるぞ」 
と、言いました。 
 すると男は、 
「ああ、大黒さん。柄はまだ出来んが、まじめに働いたおかげで、家にはこんなに食べ物がたまった。それに、働くのが楽しくなった。だからもう、小槌はいらんようになった」 
と、言いました。 
 するとそれを聞いた大黒さんは、にっこり笑って、 
「そうか。それはめでたい。どうやらお前の心に、立派な打ち出の小槌が出来たようだな。これからもまじめにクワを振れば、欲しい物は何でも出てくるようになるぞ」 
と、言って、山に帰って行ったそうです。 
      おしまい 
        
         
        
       
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