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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
川に落ちた下駄 
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて 
      
      
       むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
         
 ある小川での事、子どもたちが集まって何やら騒いでいます。 
「はやく、取って」 
「待ってなよ。・・・あっ、もう手が届かない」 
「はやくはやく、向こう側に行ってしまうよ」 
「よし、それなら棒で」 
 どうやら、女の子があやまってげたを片一方を、小川に落としてしまったようで、それを一緒に遊んでいた男の子たちは、拾おうとしている様子です。 
 しかし、小川の流れはゆるやかなものの、子どもたちはあわてているので、げたはかえって岸から遠くへ行ってしまいました。 
 これでは、いくら長い棒があっても届きません。 
「仕方ない、あきらめようか?」 
「うわーーん」 
 女の子は、とうとう泣き出してしまいました。 
 この時、仕事帰りで近くを歩いていたきっちょむさんが、女の子の泣き声を聞きつけてやってきたのです。 
「やっ、げたを落としたのか。よし、待ってな」 
 きっちょむさんは、落ちていた石を拾うと、それをげたの向こう側にドブンと投げ込みました。 
 するとげたは波に押されて、ゆらりゆらりと、少しこちらに近づきました。 
「さあ、お前たちも、げたの向こう側に石を投げるんだ」 
 こうして子どもたちも加わって、げたの向こう側に石を投げ続けると、げたはどんどん波に押されて近づいてきて、ついには手の届くところにやって来ました。 
 こうしてげたを拾い上げたきっちょむさんは、そのげたを自分の着物でていねいに拭いてやると、にっこり微笑む女の子に渡してやったのでした。 
      おしまい 
        
         
        
       
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