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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
来年の事を言うと鬼が笑う 
島根県の民話 → 島根県情報 
      
       
      
      
       むかしから、来年の事を言うと鬼が笑うと言います。 
 それには、こんなわけがあるのです。 
 
 むかしむかし、とても強いすもうとりがいました。 
 ところが突然の病で、ころりと死んでしまいました。 
 人は死ぬと、えんま大王のところへ連れていかれます。 
 生きている時に良い事をした者は、楽しい極楽へ送られます。 
 生きている時に悪い事をした者は、恐ろしい地獄へ送られます。 
 えんまさまは、すもうとりに聞きました。 
「お前は生きている時、何をしていた?」 
「はい、わたしはすもうをとって、みんなを楽しませてきました」 
「なるほど、そいつはおもしろそうだ。よし、お前を極楽に送ってやろう。だがその前に、わたしにもすもうを見せてくれ」 
「でも、一人ですもうをとる事は出来ません」 
「心配するな。ここには強い鬼がたくさんおる。その鬼とすもうをとってくれ」 
 えんまさまは、一番強そうな鬼を呼んできました。 
 相手が鬼でも、すもうなら負ける気がしません。 
 すもうとりはしっかりとしこをふんでから、鬼の前に手をおろしました。 
 鬼も負けじとしこをふんで、手をおろしました。 
「はっけよい、のこった!」 
 えんまさまが言うと、すもうとりと鬼が四つに組みました。 
 鬼は怪力ですもうとりを押しますが、でもすもうとりは腰に力を入れて、 
「えい!」 
と、いう声とともに、鬼を投げ飛ばしました。 
 投げ飛ばされた鬼は岩に頭を打ちつけて、大切な角を折ってしまいました。 
「ああっ、大切な角が」 
 
        角が折れた鬼は、わんわんと泣き出しました。 
「こらっ、鬼が泣くなんてみっともない!」 
 えんまさまが言いましたが、でも鬼は泣くばかりです。 
 困ったえんまさまは、鬼をなぐさめるように言いました。 
「わかったわかった。もう泣くな。来年になったら、新しい角が生えるようにしてやる」 
 そのとたん鬼は泣きやんで、ニッコリと笑いました。 
 
 そんな事があってから、 
『来年の事を言うと鬼が笑う』 
と、言うようになったそうです。 
      おしまい 
        
         
        
       
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