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      福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
       
        
       
なまけ弁当 
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて 
      
      
       むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。 
 吉四六さんは庄屋(しょうや)さんにお金を借りたので、その代金の代わりにしばらくの間、庄屋さんの畑で畑仕事をする事になりました。 
 
 ある日の夕方、吉四六さんが畑から帰って来て言いました。 
「庄屋さん。今日は草を残らず刈り取りました。お弁当をこしらえていただいたおかげで、大変はかどりまして、ありがとうございます」 
 すると、庄屋さんが言いました。 
「はかどったといっても、何もお前が仕事をしたわけじゃない。弁当が仕事をしたまでの事じゃ」 
「はあ、弁当がですか?」 
 吉四六さんは、首を傾げて家に帰りました。 
 
 その次の日、吉四六さんは庄屋さんに弁当をもらって、裏山の畑に出かけて行きました。 
 そして畑の真ん中にクワを突き刺すと、クワの柄の先に弁当をしばりつけました。 
 そして自分は涼しい木の陰ヘ行って、手足を伸ばして寝ころびました。 
 やがてお昼過ぎになると、庄屋さんが見回りにやって来ました。 
「おや?」 
 見ると、畑の真ん中にクワが突き刺さっています。 
「こんな所に、大事な畑道具を置きっぱなしにして。・・・おや? 畑仕事は何一つ手をつけておらんじゃないか。いったい吉四六さんは、どこヘ行ったんじゃ?」 
 庄屋さんがその辺りを探してみると、吉四六さんは大の字になって、グーグーと大いびきをかいています。 
 庄屋さんは、カンカンに怒って、 
「吉四六! そのざまは何事じゃ!」 
と、怒鳴りつけました。 
 すると吉四六さんは、寝たままで目を開けて、 
「ありゃ? 庄屋さんでしたか」 
「でしたかいもない! このいいお天気に、朝から何一つ仕事もせんで!」 
「へい、ですが」 
「ですが。何じゃい?」 
 吉四六さんは、落ち着いて言いました。 
「昨日、庄屋さんがおっしゃりました。畑仕事は弁当がするんじゃと。それであの通り、弁当にクワを持たせて、畑に出してやりました」 
「何じゃと!」 
 カンカンに怒っている庄屋さんを見あげて、吉四六さんは、 
「はて、ここから見ておりますと、弁当の奴め、いっこうに仕事をしませんな。仕事は弁当がするもんじゃのに。ねえ、庄屋さん。弁当のやつは、怠け者ですな」 
「・・・・・・」 
 庄屋さんは、返す言葉がありませんでした。 
      おしまい 
         
         
        
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