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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
      ふるやのもり 
      鳥取県の民話 → 鳥取県の情報 
      
      
       むかしむかし、雨の降る暗い晩のこと、おじいさんが子どもたちに、話を聞かせていました。 
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」 
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」 
 ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと、屋根裏にひそんでいました。 
 どろぼうは、これを聞いてニヤリ。 
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと) 
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」 
「けものならば、・・・オオカミだの」 
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」 
「そりゃ、ふるやのもりだ」 
 ウマを食べようと、ウマ小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いておどろきました。 
 ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる、雨もりのことです。 
 だけどオオカミは、そんなこととは知りません。 
「おらよりこわい、ふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」 
と、ガタガタふるえだしました。 
 屋根裏のどろぼうも、話を聞いてヒザがガクガクふるえています。 
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」 
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(ふるやのもり)が、首にポタリと落ちました。 
「ヒェーーッ! で、でたあー!」 
 どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン! 
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」 
 オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。 
 振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうと、メチャクチャに走り続けます。 
 夜明けごろ、うまいぐあいに、つき出ている木の枝を見つけたどろぼうは、 
「とりゃー!」 
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。 
「たっ、助かった」 
 オオカミのほうは、背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。 
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」 
と、トラのところへ出かけました。 
 話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前で、そんなことはいえません。 
「ふるやのもりという化け物、必ず、わしが退治してやる。安心せい」 
 トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。 
 すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。 
 オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえだしました。 
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」 
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」 
 トラは、こわいのをガマンして、 
「ウォーッ! ウォーッ!」 
と、ほえながら木をゆさぶりました。 
 すると、どろぼうが二匹の上にドシン! と落ちてきました。 
「キャーン!」 
「ニャーン!」 
 トラとオオカミは、なさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。 
 どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って、二度と帰ってはきませんでした。 
      おしまい 
        
         
        
       
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