福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
      イラスト Smile STATION 
       
しょうじょう寺のタヌキばやし 
      
      
       むかしむかし、山にかこまれた、しょうじょう寺という小さなお寺がありました。 
 山にはタヌキがいっぱいいて、夜になると寺へやってきては、はらつづみを打ったり、あばれまわったりと、いたずらのしほうだい。 
 おかげで、この寺には和尚(おしょう)さんがいつかず、寺はあれほうだいです。 
 身分の高い和尚さんが、この寺の事を聞いて、 
「よろしい、わしが行ってしんぜよう」 
と、しょうじょう寺へやってきました。 
「うむ、これは聞きしにまさるひどさじゃ」 
 あまりにもひどい寺のあれように、和尚さんはあきれ顔です。 
♪なんまいだあ〜 
♪なんまいだあ〜 
 本堂から、ひさしぶりにお経が聞こえてきました。 
 うら山のタヌキたちは顔を見あわせてニヤリと笑うと、さっそく、新しい和尚さんを追い出す相談をはじめました。 
「おい、ポン太とポン子、いつものやつ、やってみろ!」 
「へ〜い!」 
 ドロンパッ! 
 ポン太とポン子は、なにやら姿をかえてしまいました。 
「おう、みごとじゃ。はよういって、おどかしてこい」 
「へ〜い!」 
 そして、 
♪なんまいだあ〜 
♪なんまいだあ〜 
と、お経をあげる和尚さんのうしろに、そうっと近づいたポン太は、ぬっと顔を出しました。 
「ギャアーーーー!」 
 目の前に現れたのは、一つ目小僧です。 
 そこへ、美しい娘も現れて、 
「和尚さん、お茶をどうぞ」 
と、いいながら、首をニョロニョロとのばしてきたではありませんか。 
「た、た、たすけてくれ〜っ」 
 和尚さんは、寺の石段をころがるようにかけおりて、逃げ出してしまいました。 
 寺の庭に集まったタヌキたちは、大わらいしながら、とくいになってはらつづみを打ちました。 
 さて、次に現れたのは、力の強そうな、ごうけつ和尚でした。 
 和尚さんが寺につくと、さっそくタヌキたちはおどかしにかかりました。 
 ところが、一つ目小僧に化けたポン太は、頭をコツンとなぐられ、娘に化けたポン子が首をニョロニョロのばすと、首をねじまげられるしまつです。 
「うえーん、いたいよう!」 
 二匹は、なきなき帰っていきました。 
 タヌキの親分は考えました。 
「う〜ん、あの和尚、なにに化けてもこわがらん。・・・そうだ、一晩中はらつづみを打ちつづけるんだ。そうすれば和尚のやつ、ねむれなくなって、まいっちまうぞ」 
 その夜、タヌキたちはいっせいにはらつづみを打ちはじめました。 
♪ポンポコポンのポン! 
 ぐっすりねむっていた和尚は、さすがにその音で目をさましました。 
 むっくり起きあがって戸を開けると、 
「こらっ! 庭であそんじゃいかん」 
 タヌキたちはすばやく逃げ出して、木のかげにかくれてしまいました。 
「こらっ、待て! こらっ、逃げるな! タヌキたちのやつ、ばかにしやがって」 
 和尚は庭中、タヌキを追いかけまわしましたが、タヌキたちのすばやさには、とてもかないません。 
 そのうち石につまずいてころんで、目をまわしてしまいました。 
 こうして和尚は、またまた、タヌキたちにやられてしまったのです。 
 さて、その次に現れたのは、なんともきたない和尚さんでした。 
 この和尚さんは、きたないこの寺をすっかり気に入ってしまいました。 
「おう、しずかでいい寺じゃ」 
 タヌキたちはさっそく、この新しい和尚さんを追い出す相談です。 
 いつものように、まず一つ目小僧のポン太が出ていきましたが。 
「おう、これはかわいい一つ目小僧じゃ。そら、ダンゴでも食わんか?」 
 ポン太は和尚さんにダンゴをもらって、とことこ帰ってきました。 
 今度は、ポン子ねえさんです。 
 ところが、和尚さんは大よろこび。 
「さあ、首の長いおねえさんも、一ぱいいこう」 
と、ポン子にお酒を飲ませるしまつ。 
 タヌキの親分はおこりました。 
「ようし、こうなったらあの手だ」 
と、いうわけで、その夜、和尚さんがねついたころ。 
♪ポンポコポンのポン! 
 物音で目をさました和尚さんが戸を開けると、タヌキたちがせいぞろいして、はらつづみを打っています。 
「こりゃおもしろい。わしもなかまに入れてくれ」 
 ずいぶんとかわった和尚さんで、庭におりてくると、タヌキたちといっしょにはらつづみを打ちはじめました。 
♪ポンポコポンのポン! 
♪ポンポコポンのポン! 
 どうも、タヌキたちの音とはちがうようです。 
「なんだなんだ、その音は。わっはっはっは」 
 タヌキたちに笑われて、和尚さんは、いっしょうけんめいたたきました。 
「よせよせ、はらがこわれてしまうぞ」 
 タヌキの親分がとめるのも聞かず、和尚さんはたたきつづけます。 
 そのうち、おなかをたたきつづけた和尚さんは、とうとうフラフラになって、たおれてしまいました。 
「それ、いわんこっちゃない。このままじゃ、かぜをひいてしまうぞ。和尚さんを寺の中へ運んでやれ」 
 和尚さんを追い出そうとしたタヌキたちでしたが、和尚さんを親切にかいほうしました。 
 次の日の朝。 
「はて、わしはいつここへもどったんじゃろう。まあ、それはどうでもいいわ。もう少しはらつづみがうまくならんといかんな」 
と、いうわけで、和尚さんは朝早くから、はらつづみの練習をはじめました。 
「強くたたけばいいってもんじゃないな。コツじゃ、コツ。そいつをおぼえねば」 
 和尚さんは、昼めしもそこそこに、またはらつづみのけいこです。 
 やがて、おてんとさまが西にかたむくころ、和尚さんのおなかは、かなりいい音が出るようになっていました。 
 さて、今夜は満月です。 
 和尚さんもタヌキたちも、早くから寺の庭にせいぞろいして、みんなで楽しくはらつづみです。 
♪ポンポコポン、ポンポコポン。 
♪ポンポコポン、ポンポコポン。 
♪ポンポコポンの、スッポンポン。 
 和尚さんのおなかの音がずいぶんよくなったので、タヌキたちも負けてはいられません。 
「和尚さんに負けるな、負けるな」 
と、ひっしでおなかをたたいているうちに、タヌキの親分のおなかは、どんどんふくれていきました。 
 それでもたたきつづけます。 
 そしてついに。 
 バーン! 
 とうとうおなかがはれつして、タヌキの親分は、ひっくりかえってしまいました。 
「こりゃ、たいへんじゃあ! 薬、薬」 
 和尚さんは大いそぎで薬を持ってきて、タヌキのおなかにぬってやりました。 
「どうだ、ぐあいは?」 
 心配そうにたずねる和尚さんに、タヌキの親分はニッコリしていいました。 
「和尚さんのおかげで、もうなおった。さて、続きをやるぞ。それっ、あいててて!」 
 タヌキの親分はうでをふりあげましたが、まだむりのようです。 
「次の満月までしんぼうしなさい。みんな、今夜は親分のおなかが早く治るよういのって、元気よくやろう」 
 こうして、タヌキたちとゆかいな和尚さんは、朝まで元気よくはらつづみを打ちつづけました。 
 そして、しょうじょう寺というこのお寺では、いまも満月の夜には、タヌキたちが庭に集まって、はらつづみをうつという話です。 
      おしまい 
      証城寺(しょじょうじ)の狸(たぬき)ばやし
       
       作詞 野口雨情 
 作曲 中山晋平
1 
  ♪ しょ しょ しょうじょうじ  
  ♪ しょうじょうじの 庭は 
  ♪ つ つ 月夜だ 
  ♪ みんなでて こいこいこい 
  ♪ おいらの 友だちゃ 
  ♪ ポンポコポンの ポン 
2 
  ♪ 負けるな 負けるな 
  ♪ 和尚さんに 負けるな 
  ♪ こい こいこい こいこいこい 
  ♪ みんなでて こいこいこい 
3 
  ♪ しょ しょ しょうじょうじ 
  ♪ しょうじょうじの はぎは 
  ♪ つ つ 月夜に 花ざかり 
  ♪ おいらも うかれて 
  ♪ ポンポコポンの ポン 
   
         
        
       
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