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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
      ふしぎな宝ゲタ 
      島根県の民話 → 島根県の情報 
      
      
       むかしむかし、あるところに、さすけという男が、おかあさんと二人でくらしていました。 
 ある日、おかあさんが重い病気になりましたが、医者にかかりたくてもお金がありません。 
(このままでは、おかあさんが死んでしまう。お金持ちのごんぞうおじさんに、お金をかりよう) 
と、さすけは出かけていきました。 
 ごんぞうおじさんは、 
「金をかせというのか? それなら、おらの家のひろい畑を、一日でたがやすんだ!」 
と、どなりました。 
 さすけは早くお金をもらって、おかあさんを助けようとがんばり、一日で畑をたがやしました。 
 でも、ごんぞうおじさんは、 
「まだ金はかせん。大おけに水をいっぱい入れろ!」 
と、またどなりました。 
 つぎの日、さすけは水をはこびました。 
 ところが、おけには小さな穴があけてあって、いくらはこんでもいっぱいになりません。 
「なまけ者! 金はかせん、帰れっ!」 
 さすけは追い返されました。 
 トボトボ歩いていくと、とあるお宮の前にきました。 
(おなかがへったなあ。もう歩けない。どうしたらいいんだろう) 
 さすけは、ウトウトと、いねむりをしてしまいました。 
 カラーン カラーン カラーン カラーン  
 ゆめの中でしょうか。 
 ゲタの音が近づいてきます。 
 あらわれたのは、やさしい顔のおじいさんでした。 
「母親思いのさすけよ。おまえに一本のはのゲタをさずけよう。このゲタをはいてころぶと、そのたびに小判が出る。だが、ころぶたびに背が低うなる。やたらと、ころぶではないぞ」 
「は、は、はい。ありがとうございます」 
 おじいさんのすがたは、パッと消えてしまいました。 
「ありゃ? 夢か? でも、ほんとうにゲタがあるぞ」 
 さすけは、おっかなびっくり、ゲタをはいてみましたが、なにしろ一本はのゲタです。 
 立つか立たないうちに、スッテン! 
「あっ、いてててえ」 
と、いったとたん、チャリーン。 
「ああ、小判だ!」 
 さすけは、大よろこびです。 
 その小判を持って、すぐに医者のところへいきました。 
 医者にみてもらったおかあさんは、みるみる元気になりました。 
 それで、あのゲタは大事にしまって、さすけは、おかあさんといっしょに、毎日よくはたらきました。 
 そこへ、ごんぞうおじさんが、さすけのようすを見にやってきました。 
 そっとのぞくと、ごちそうを食ベています。 
「やいやい。このごちそうはどうした! ごちそうを買う金があるくせに、おらのところに金をかりに来たのか!」 
「まあまあ、気をしずめてください。これには深いわけが」 
 さすけは、あのゲタの話をしました。 
「なに、小判の出るゲタだと。こいつはいい。これは、びんぼう人のおまえたちより、金持ちのおらがもつべきだ。もらっていくぞ」 
 ごんぞうおじさんは、ゲタを持って帰っていきました。 
 家に帰ったごんぞうおじさんは、さっそく大きなふろしきを広げました。 
 そしてゲタをはいて、ふろしきの上にのると、 
「へっヘっへ、まずは、ひところび」 
と、言って、スッテンと、ころびました。 
 すると、小判がチャリリリーン。 
「おおっ! 本物の小判じゃ!」 
 さあ、それからというもの、 
♪ころんでころんで、小判がほしい。 
♪チャリンコ、チャリンコ、小判がほしい。 
 ごんぞうおじさんは、夢中になってころびました。 
「おおっ! 小判がだんだんでっかくなるぞ! おらよりでっかくなっていくぞ! おら、日本一の大金持ちじゃあー!」 
 ごんぞうおじさんは、ころぶたびに自分が小さくなっていくことに、ぜんぜん気づいていません。 
 そのころさすけは、ゲタをはいてころぶと、背が低くなることを言いわすれたのを思い出して、あわてて、ごんぞうおじさんに会いにいきました。 
  家に行ってみますと、しめきった家の中で、チャリーン、チャリーンと、音がします。 
「おじさーん、おじさーん!」 
と、呼んでみましたが、へんじがありません。 
 さすけは、とびらを力まかせにあけました。 
 すると、中から小判が、ジャラジャラと出てきます。 
「うああっ! ごんぞうおじさん。どこだあー!」 
 ごんぞうおじさんは、山のようにつまれた小判のすみで、バッタのように小さくなっていました。 
 それでも、ころんでは起き、ころんでは起きして、小判を出しています。 
 そのうちに、とうとう小さな虫になって、どこかへ飛んでいってしまいました。 
 その後、さすけはごんぞうおじさんの家をひきとって、長者(ちょうじゃ)さまになり、おかあさんとしあわせに暮らしました。 
 
 よくばりすぎると、ろくなことがありませんね。 
        
         
        
       
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