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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
           
         
ウサギの目が赤いわけ  
大阪府の民話 → 大阪府情報  
      
      
       むかしむかし、ウサギには、とても立派な角がありました。  
 ウサギはこの角が自慢で、外へ出かける時はいつも角を頭の上に乗せていました。  
「えへん。どうだい、この角は。きみたちには、こんな立派な角はないだろう」  
 ウサギは他の動物に会うと、いつも大いばりです。 
 
 ある日の事、いつもの様にウサギが頭に角を乗せて歩いていると、反対側からシカがやってきました。  
 その頃のシカには、まだ角がなかったのです。  
 ウサギはさっそく、シカに自慢をしました。  
「シカくん、きみはぼくよりも体が大きいが、こんな立派な角はないだろう」  
「・・・・・・」  
 いくら自慢をされても、角のないシカには言い返す事が出来ません。  
(いいなあ。ぼくにも、あんな立派な角があったらなあ)  
 シカは、ウサギがうらやましくなりました。  
 そこでシカは、ウサギに言いました。  
「ほんとうに、立派な角だね。すごいよ。・・・ねえ、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、貸しておくれよ」  
 そう言われると、ウサギはうれしくなりました。  
「うーん。大事な角だが、そこまで言うのなら、ちょっとぐらいなら貸してやってもいいかな。はい」  
 ウサギが頭の角を外してシカに貸してやると、シカはウサギの角をしげしげとながめました。  
(いいなあ、いいなあ、ほしいなあ〜)  
 見れば見るほど立派な角なので、シカは角がほしくてほしくてがまんできません。  
 そこでシカは、ウサギに言いました。  
「ああ、なんて素敵な角だろう。ねえ、お願いだから、ぼくにもちょっとかぶらせてくれないか。ほんのちょっと、ちょっとだけでいいんだ」  
 シカがあんまりうらやましそうに言うので、ウサギはますますうれしくなりました。  
「うーん。大事な角だが、ちょっとだけなら、かぶらせてやってもいいかな」  
 ウサギは角を、シカの頭にかぶらせてやりました。  
「どうだい、気分は?」  
「うん、いいよ、いいよ! まるで、王さまになった気分だ!」  
 シカはうれしそうに首をふって、川のふちへ行きました。  
 そして川にうつる自分の姿を見て、シカはうっとりです。  
「ウサギさん、どうだい。ぼくにも角が、似合うとは思わないかい?」  
「まあまあだね。だけど、ぼくほどは似合わないよ」  
「いいや、この角は、ぼくにぴったりなんだ!」  
 シカはそう言うと、いきなり川へ飛び込みました。  
「あっ、こら!」  
 びっくりしたウサギはシカに文句を言いましたが、シカは向こう岸へ上がると、あかんべぇーをしながら言いました。  
「やーい、返して欲しければ、ここまでおいで」  
「なっ、なんだとー!」  
 でもウサギは泳げないので、向こう岸へ渡る事が出来ません。  
「こら、返せ! 返さないと、ひどいぞ!」  
 ウサギは大声で言いましたが、シカはそのまま山の中へと逃げてしまいました。  
「あーん、ぼくの角、ぼくの角が・・・」  
 それからというもの、ウサギは泣きながら毎日シカを探して回りました。  
 でもどうしても、あのシカを見つける事は出来ませんでした。 
「あーん、ぼくの角、ぼくの角・・・」  
 ウサギはあんまり泣きすぎたので、目がまっ赤になってしまったという事です。  
      おしまい 
        
         
        
       
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