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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
       
        
       
お腹に忘れられたかさ 
長野県の民話 → 長野県情報 
      
      
       むかしむかし、とてもお酒好きな男が町でお酒を飲んでの帰り道、急にのどが渇いて水を飲みたくなりました。 
「ああ、喉が渇いたな。どこかに、水はないかな?」 
 辺りを見回すと、一軒の家の前に水の入ったおけが置いてありました。 
 それはとても汚い水で、蚊(カ)の幼虫のボウフラがたくさんわいていましたが、 
「もう、我慢できん!」 
と、酒飲みはおけの中に首を突っ込んで、その汚い水をガブガブと飲んだのです。 
「あー、喉の渇きが治まった」 
 ところがお腹の中のボウフラがウヨウヨと動くので、気持ちが悪くなって家に帰っても寝る事が出来ません。 
「弱ったなあ」 
 酒飲みが青い顔で寝転んでいると、友だちがやって来ました。 
「どうした? そんなに、気持ちの悪そうな顔をして」 
 酒飲みが訳を話すと、友だちが言いました。 
「それなら、金魚を飲めばいい。ボウフラは金魚のエサだから、金魚がみんな食べてくれるさ」 
「そうか、その手があったか」 
 酒飲みはさっそく、金魚を一匹飲み込みました。 
 ところが、お腹に入った金魚がボウフラを追い回すので、酒飲みは余計に気持ちが悪くなりました。 
「ちえっ、つまらん事を教えやがって」 
 酒飲みが気持ち悪そうに寝ていると、別の友だちがやって来て言いました。 
「それなら、鳥を飲めばいい。鳥なら、ボウフラも金魚も食べてくれるさ」 
「そうか、その手があったか」 
 酒飲みは、さっそく鳥を飲み込みました。 
 鳥はボウフラも金魚も食べてくれましたが、食後の運動にお腹の中でバタバタと暴れるので、酒飲みはお腹が痛くてたまりません。 
「ちえっ、つまらん事を教えやがって」 
 酒飲みは青い顔で、鳥が暴れない様にお腹を押さえていました。 
 するとそこへ、また別の友だちがやって来て言いました。 
「それなら、おれのおじさんを呼んでやろう。おれのおじさんは、鳥を捕まえる名人だ」 
「そうか、その手があったか」 
 そこで酒飲みは鳥を捕まえる名人のおじさんに、お腹の中へ入ってもらう事にしました。 
 おじさんはいつもの様にかさをかぶり、鳥を捕まえるさおを持って酒飲みのお腹の中へ入って行きました。 
 さすがは、名人です。 
 あっという間に鳥を捕まえると、外へ出て来ました。 
 ところがうっかりかさを忘れてしまったので、酒飲みのお腹はガサガサして、ますます気持ちが悪くなったという事です。 
      おしまい 
         
         
        
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