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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
       
        
       
塩買い大黒 
鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報 
      
      
       むかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)で、塩がとても少なくなった年がありました。 
 特に川内(せんだい)のあたりがひどく、奉平寺(たいへいじ)というお寺でも和尚さんや小僧が、毎日、朝から晩まで塩探しに走り回っていました。 
 
 そんなある日です。 
 本堂を掃除していた小僧は、本堂でどっかりと座っている大黒さんを見ながら、うらめしそうにつぶやきました。 
「大黒さんは、よかね。 
 みんなが塩不足で困っとるのに、いつものんびりとひまそうに。 
 だいたい大黒さんは、福を持って来るのが仕事じゃろう。 
 それが何もせんで、座っちょるだけか? 
 そうじゃろ? 
 なあ、黙っとらんで、何か言うてみい」 
 しかし相手は木彫りの大黒さんなので、いくら文句を言っても返事をするわけがありません。 
「けっ、こげん言っても、返事もなかか」 
 腹が立った小僧は大黒さんを足でけりつけると、本堂を出て行きました。 
 
 さて次の日、大変な事が起こりました。 
 大黒さんの姿が、どこにもないのです。 
 お寺のみんなはあちこち探しましたが、やっぱりどこにもありません。 
「もしかして、泥棒にでも盗られたんじゃろか?」 
「そうかもしれんな。何せ、これだけ探しても見つからんのじゃから」 
「まあ、今は大黒さんよりも塩の方が大事じゃ」 
「そうじゃな」 
 やがてみんなは、大黒さんを探すのをあきらめてしまいました。 
 
 それから、間もなくの事です。 
 川内の港に、塩を山の様に積んだ船がやって来ました。 
 川内の人々は大喜びで迎えましたが、誰が船を頼んだのか分かりません。 
 そこで船頭に聞いてみると、 
「それが四、五日前に、『川内に塩を届けてくれ』ちゅうて、どっさり金を置いて行った人がおったのです。 
 何とも変わった格好の客でな。 
 大きな袋かついで、頭巾をかぶっとったよ」 
と、首をかしげて答えるのです。 
 それを聞いた小僧は、びっくりです。 
「そっ、その格好は、大黒さんじゃ。まさかうちの大黒さんが」 
 そしてあわてて寺に戻った小僧は、本堂を見てびっくり。 
 何と大黒さんが、ちゃんと元の場所に座っているではありませんか。 
 しかも大黒さんの足が砂で汚れており、おまけにその砂が本堂の縁側からずっと続いているのです。 
 さらによく見ると、大黒さんのかついでいる大きな袋が、前よりも少し小さくなっているのです。 
 小僧はその場にひれ伏すと、 
「大黒さん、この前は失礼しました! そして塩を、ありがとごわした」 
と、手を合わせて謝ったそうです。 
      おしまい 
         
         
        
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