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          福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
         
        
       
子ザルのまつ 
長野県の民話 → 長野県情報 
      
      
       むかし、松代町(まつしろちょう)と言うところに、徳嵩源五郎(とくたかげんごろう)と言う腕の良い彫り物師が住んでいました。 
 ある日、源五郎は山でサルの親子を見つけました。 
 母ザルは猟師に鉄砲で撃たれたのか、背中から血を流して死んでいましたが、そのふところには生まれたばかりの子ザルが、母ザルのおっぱいを探して手足を動かしています。 
「なんと、可哀想に」 
 哀れに思った源五郎は、さっそく子ザルを抱くと家に連れて帰りました。 
 そして源五郎夫婦は子ザルに『まつ』と言う名前を付けて、我が子同様に可愛がったのです。 
 
 まつはとてもかしこいサルで、源五郎が踊りや芸を教えると、それは上手にやってみせるのです。 
 そしてまつの話は評判になって、やがては松代(まつしろ)の殿さまの耳にまで届きました。 
 殿さまはさっそく、源五郎とまつを呼び寄せました。 
 まつは源五郎の合図に合わせて、逆立ちや宙返りの芸を見せました。、 
「これは見事。見事だ」  
 殿さまは、大喜びです。 
 そしてまつの芸を見終わった殿さまは、源五郎に言いました。 
「源五郎よ。金なら、いくらでも出そう。だからサルをゆずってくれ」 
「えっ、まつを?」 
 これには、源五郎も困ってしまいました。 
 たとえ殿さまの命令でも、まつは我が子同様に可愛がっているサルです。 
(よわったな) 
 何と返事をしたら良いかと迷っていると、源五郎のそばに座っていたまつが、とつぜん殿さまの前に進み出て、ていねいに両手をつくと、 
『そればかりは、ごかんべんを』 
と、言う様に、何度もおじぎをしたのです。 
 これを見た殿さまは、とても心を打たれて、 
「よいよい、今の言葉は取り消しじゃ。だがその代わり、時々城へ遊びに来るのじゃぞ」 
と、やさしく言いました。 
 こうして源五郎夫婦とまつは、それからも仲良く幸せに暮らしました。 
 
 今でもまつのお墓は、松代町大信寺にある徳嵩家の墓地に残っているそうです。 
      おしまい 
         
         
        
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