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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
げんこつのほうび 
新潟県の民話 → 新潟県情報 
      
       
      
      
       むかしむかし、ある国の殿さまが、 
《珍しい物を持って来たら、ほうびをとらせる》 
と、おふれを出しました。 
 それを聞いた人たちは、珍しい物を持って次々と城へ出かけました。 
 でも、色々と珍しい物を持っている殿さまは、 
「こんな物、ちっとも珍しくない」 
と、みんなを追い返してしまいました。 
 
 さて、この国にカブを専門につくっているお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。 
 お百姓さんは大きな大きなカブをつくろうとして、長い間、苦労を重ねてきました。 
 そしてその苦労が実って、大きな岩みたいなカブが出来たのです。 
「これなら、あの殿さまも見た事がないだろう」 
 お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、そのカブを荷車に乗せると城へ運んで行きました。 
 ところが城の門番が、 
「カブなんて、ちっとも珍しい物ではない」 
と、中へ入れてくれません。 
「でもこれは、おらが一生懸命に育てたカブです。 
 こんな大きなカブは、どこを探しても他にありません。 
 一目だけでも、殿さまに見ていただきたいのです」 
 お百姓さんがあまりにも頼むので、門番は殿さまに大きなカブの事を話してくれました。 
 すると、殿さまは喜んで、 
「すぐ、持って来るように」 
と、言いました。 
 それを聞いた門番は、急いで戻るとお百姓さんに言いました。 
「わしのおかげで、どうにか殿さまが見てくださる事になった。わしのおかげでな。・・・いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分寄こせよ。何しろ、わしのおかげなんだからな。わかったな!」 
「はい、しょうちしました」 
 お百姓さんは、城の庭へ荷車を引いて行きました。 
 殿さまは荷車の上のカブを見て、とても目を丸くしました。 
「これは珍しいぞ。よくぞここまで、カブを育てたものだ。ほうびをとらすから、何でも欲しい物を言うがよい」 
 でも、お百姓さんはほうびよりも、あの門番をこらしめてやろうと思いました。 
 そこで、殿さまに訳を話して、 
「おらに、げんこつを十個ください」 
と、言ったのです。 
「よし、よし。そう言う事なら、げんこつをあげよう。もっと近くへ来なさい」 
 殿さまは、お百姓さんの頭をやさしく十回叩いて言いました。 
「お前は正直者だ。本当のほうびは、あとで届けてやるからな」 
「ありがとうございます」 
 お百姓さんは喜んで荷車を引くと、城の庭を出ていきました。 
 門のところへ来ると、門番が待ちかねた様に言いました。 
「どうじゃ。殿さまにほうびを頂いたか?」 
「はい、おかげさまで」 
「よし。それじゃ約束通り、ほうびの半分をもらおうか」 
 門番はお百姓さんの前に、両手を突き出しました。 
 そのとたん、お百姓さんはこぶしで、門番の頭を思いっ切り殴りつけました。 
「あいた! な、なにをする!」 
「おらが殿さまからもらったほうびは、げんこつが十個だ。半分やるから、覚悟しろ!」 
 お百姓さんはこぶしをにぎりなおすと、あと四回、門番の頭を殴りつけました。 
 これには門番もたまらず、そのままひっくり返ってきぜつしてしまいました。 
「ははーん。ざまあみろ」 
 気の晴れたお百姓さんは、ニコニコしながら家に帰っていきました。 
 そして家に帰ると、すぐに殿さまからのほうびのお金が届きました。 
 お百姓さんはそのお金で、村人たちにごちそうをしたという事です。 
      おしまい 
        
         
        
       
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