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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
       
        
       
イモ掘り藤五郎 
石川県の民話 → 石川県情報 
      
      
       むかしむかし、加賀山科(かがやましな)の里に、山イモを掘って生活している藤五郎(とうごろう)という若者がいました。 
 藤五郎はとても気の良い男で、余った山イモは村人たちにただで配っていました。 
 
 ある日の事、そんな藤五郎の家に、都からとても美しいお姫さまがやって来ました。 
 そして何と、 
「藤五郎さま、わたくしをあなたのお嫁さんにしてください」 
と、頼んだのです。 
 びっくりした藤五郎は、お姫さまに言いました。 
「それはうれしいが、せっかく嫁に来てもらっても、家は貧乏で二人が食べる分のお米もない」 
 するとお姫さまは、 
「心配いりません。これがあれば、お米だってお魚だって何でも買えますよ」 
と、砂金(さきん)の入った錦(にしき)の袋を藤五郎に渡したのです。 
「はあ、こんな物でねえ」 
 藤五郎は砂金の価値もわからないまま、山をおりて買い物に出かけました。 
 そして藤五郎は山を下りる途中で、二羽の鳥を見つけました。 
「うまそうな鳥だな。あのお姫さまに、食べさせてやろう」 
 藤五郎はそう思い、お姫さまにもらった砂金の袋を鳥めがけて投げつけました。 
 ところが砂金の袋は口が開いてバラバラになり、鳥も逃げてしまいました。 
 
 手ぶらで帰ってきた藤五郎に、砂金を無くした事を聞いたお姫さまはがっかりです。 
「まあ、あなたという人は、何という事をしたのでしょう」 
 そんなお姫さまに、藤五郎は言いました。 
「そいつは悪い事をしたな。だけどもこんな物、山イモを掘ればいくらでもツルについているがな」 
 藤五郎はお姫さまを山に連れて行くと、山イモを掘ってみせました。 
 すると本当に、山イモのツルがピカピカに輝いています。 
「まあ、なんてことでしょう」 
 お姫さまが山イモを沢(さわ)で洗ってみると、たくさんの砂金がとれました。 
 それから藤五郎は、イモ掘り長者と呼ばれるお金持ちになりました。 
 そして村人たちは山イモを洗った沢を『金洗沢(かねあらいさわ)』と呼び、いつの頃からか『金沢(かなざわ)』と呼ぶようになったのです。 
      おしまい 
         
         
        
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