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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
馬坂(まさか)の行逢坂(ゆきあいざか) 
長野県の民話 → 長野県情報 
      
      
       むかしむかし、上州(じょうしゅう→群馬県)と田口(たぐち→長野県佐久市の東)との境(さかい)がはっきりしていなかったころ、田口峠のあたりでは、境をめぐる村人の争いがたえませんでした。 
 ある日のこと、田口の若者が山へたきぎを取りに出かけました。 
 ところが気がつくと上州との境を越えてしまい、高崎側の農民に取り囲まれてしまいました。 
「盗人だ。ひっとらえろ!」 
 高崎の農民たちは若者を捕まえると、高崎の殿さまの前に突き出しました。 
 若者は、まっ青になって、 
「許してくれ。決して盗人でねえ。知らないうちに、入ってしまったんだ」 
と、説明したのですが、だれも信じてくれません。 
 ところが、この高崎の殿さまは心の広い人で、農民たちと若者の話をじっくり聞いた上で、こう言いました。 
「若者よ、お前もうかつだったが、こちらも早合点したようだ。これは田口との境がはっきりしないためだ。これを機に境を決めよう」 
 それから三日後、田口の殿さまと高崎の殿さまが、同じ時間に城を出て峠に向かい、出会ったところを境にしようと決めたのです。 
 これには、田口の殿さまも賛成です。 
 気の早い田口の殿さまは、さっそく準備を始めました。 
 そしていよいよ、当日の朝。 
 早くに目覚めた田口の殿さまは、時間が来ると家来を従えて馬に乗って峠へと急ぎました。 
 一方、高崎の殿さまは、家来の者が急がすのもかまわず、まるで散歩のような気分で牛の背に乗って出かけたのです。 
 馬と牛とでは、速さが違います。 
 高崎の殿さまがやっと峠の坂道に差しかかったときには、すでに田口の殿さまの行列がやってきていました。 
「ぬかった! まさか馬で来て、こんなとこで行き逢うとは」 
 高崎の殿さまは、自分ののんきさを悔やみましたが、いまさら仕方ありません。 
 こうして二人の殿さまが出会った場所は、高崎の殿さまの驚きの言葉からとって、『馬坂(まさか)の行逢坂(ゆきあいざか)』と名づけられたそうです。 
 そしてそれ以来、境界争いはなくなったそうです。 
      おしまい 
        
         
        
       
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