| 
      | 
     
          福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
         
        
       
スズメになった若者 
和歌山県の民話 → 和歌山県情報 
      
      
       むかしむかし、あるところに、貧乏ですが正直者のおじいさんとおばあさんが住んでいました。 
 ある日、おじいさんがいつものように山へたきぎを取りに行くと、どこからともなく、おいしそうなお酒のにおいがただよってきました。 
(はて、不思議な事もあるものだ) 
 おじいさんがにおいのするほうへ歩いていくと、竹やぶの前に出ました。 
 すると、どうでしょう。 
 竹やぶの中には竹でできた酒だるがあって、スズメたちがそのまわりで、チュンチュンと楽しそうにおどっているのです。 
(これはこれは、なんて可愛いスズメたちだ) 
 おじいさんがニコニコして見ていたら、一羽のスズメが飛んできて、 
「さあ、おじいさんもお酒を飲んでください。このお酒を飲むと良い事が続いて、きっと幸せになりますよ。チュン、チュン」 
と、いうのです。 
 おじいさんはスズメたちのところに行って、そのお酒をごちそうになりました。 
「うん、これはうまい」 
 こんなおいしいお酒は、今まで飲んだ事がありません。 
 それに一口飲んだだけで、心がウキウキし、体が元気になってくるのです。 
 すっかりご機嫌になったおじいさんは、スズメたちと一緒になっておどりはじめました。 
♪酒がうまいぞ、いい気持ち。 
♪チュン、チュン、チュン 
♪はあ、こりゃこりゃ 
♪チュン、チュン、チュン 
 おじいさんのかけ声にあわせて、スズメたちもおどります。 
 もう楽しくて楽しくて、おじいさんは時間のたつのも忘れてしまうほどでした。 
 やがて夕方になって、ようやくおどりが終わりました。 
「いやあ、楽しかった。ありがとう」 
 おじいさんはスズメたちにお礼を言って、帰っていきました。 
 さて、おじいさんの家のとなりに、なまけ者の若者が住んでいました。 
 おじいさんの話を聞くと、若者もそのお酒が飲みたくなって、次の日、さっそく山へ出かけていきました。 
 お酒のにおいのするほうへと歩いていくと、おじいさんの言ったとおり竹やぶがあって、スズメたちがお酒を飲みながらおどっています。 
 若者は、竹やぶに入っていくなり、 
「おい、おれにもその酒を飲ませてくれ」 
と、言いました。 
 するとスズメたちは、首をふって言いました。 
「このお酒を飲むと、とんでもない事になるから、やめたほうがいい。チュン、チュン」 
「うるさい。はやくよこせ!」 
 若者はいきなり酒だるをつかむと、一息にお酒を飲んでしまいました。 
 すると、どうでしょう。 
 若者の体はみるみる小さくなっていき、口は口ばしに、手は羽に変わって、とうとうスズメになってしまったのです。 
 スズメになった若者は竹やぶを追われて、チュンチュンと鳴きながら、どこへともなく飛んでいきました。 
 そしておじいさんの家では、スズメたちが言ったように良い事が続いて、やがて村一番のお金持ちになったという事です。 
      おしまい 
         
         
        
            | 
      | 
     |