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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
          
         
冗談のお願い 
兵庫県の民話 → 兵庫県情報 
      
      
       むかしむかし、あるところに、仏さまを一生懸命に拝んでいるおばあさんがいました。 
 おばあさんは、毎日の様にお寺にお参りしては、 
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ・・・」 
と、拝んでいます。 
 そのうちにおばあさんはすっかり年を取ってしまったので、近頃は早く極楽(ごくらく→天国)からお迎えが来ないかと、そればかり考えていました。 
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ。仏さま、わたしはもう年で、これ以上生きていても仕方がありません。どうぞ一日も早く、わたしをお迎えに来て下さい」 
 さて、それを聞いていた、お寺の小僧(こぞう)さんは、 
(あんな事言ってるけど、本当に早く死にたいのかなあ? よし、一つ試してやろう) 
と、思いました。 
 そこである日、小僧さんは仏壇(ぶつだん)の後ろに隠れて、おばあさんの来るのを待っていました。 
 やがておばあさんがやって来て、いつもの様に拝みます。 
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ。どうぞ早く、わたしを楽にして下さい」 
 その途端、小僧さんが仏壇の後ろから言いました。 
「よしよし、そんなに言うのなら、明日迎えに来てやろう。望み通り極楽へ行って、ゆっくりするがよい」 
 さあ、それを聞いたおばあさんはビックリです。 
「いえ、いえいえ、わたしはまだ、生きていとうございます。お迎えに来るのは、うーんと、うーんと、先にして下さい」 
 おばあさんはたたみにおでこをこすりつける様に、何度も何度も頭を下げました。 
「まだ死にたくないのなら、なぜそんな事を頼むのじゃ?」 
「いえ、その、あれは、ほんの冗談(じょうだん)です。さっきのお願いは取り消しますから、どうぞ長生きさせて下さい」 
 おばあさんはそう言うと逃げる様にお寺を出て行き、大きくため息をつきました。 
「やれやれ、この仏さまは、何と耳が良いのだろう。これじゃ、うかうかと、お参りも出来ないねえ」 
 それからおばあさんは、二度とお寺には来なかったそうです。 
      おしまい 
        
         
        
       
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