| 
      | 
     
      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話 
       
        
       
はたらくことをおぼえた人間 
キューバの昔話 → キューバの国情報 
      
      
       むかしむかし、人間というものが、世界にまだ、たった一人しかいなかったときのことです。 
 たった一人の人間は、ヤカラーといいました。 
 ヤカラーは、一日じゅう、遊んでくらしていました。 
 太陽がのぼるとおきだして、あちこちをさんぽしたり、海べヘいって、小鳥のように歌をうたったりしました。 
 おなかがすけば、リンゴなど果物や木の実を、好きなだけたべました。 
 あるとき、山が大地にいいました。 
「わたしのふもとをうろついているのは、いったいなにものだ? まい朝まい朝、大声で『おれは王だぞ! おれは王だぞ!』なんて歌うから、うるさくてしかたがない。どこかへ追いはらってしまったらどうだ?」 
「それはヤカラーですよ。人間なのです」 
と、大地はいいました。 
 すると海が、話にわりこんできました。 
「まったく、山さんのいうとおりだ。大地くん。あんたはどうして、あんなことを人間にゆるしているんだね。なにが王だ。わしだって、山さんだって、大地くんだって、あいつの命令なんか、なにひとつうけていないじゃないか」 
 ヤカラーは、大地と、山と、海の話を聞きつけて、海べヘやってきました。 
 そして、 
「おれは人間だ。王だ!」 
と、さけびました。 
 はらをたてた海は、大波をたてました。 
 山もさけびました。 
「大地くん。きみはなぜ、このヤカラーとかいう人間に、木の実や草の実をとらせているんだ!」 
 大地はなるほどと思って、ヤカラーにいいました。 
「なぜ、わたしの木の実や草の実をだまってたべるのだね。もう、これからはゆるさないよ」 
 ヤカラーはこまって、海や山を見まわしました。 
 けれども、海も山もだまっています。 
 とうとうヤカラーは、大地にたのみました。 
「木の実や草の実をたべなければ、わたしは生きていけない。おねがいだ。たべることをゆるしてください」 
 大地は、こたえました。 
「よろしい。ゆるしてあげよう。だが、おまえはかわりに、なにをくれるね?」 
「・・・わかりません。わたしはなにも持っていないし、あなたは大きすぎる。なにをあげたらいいでしょう?」 
「おまえを」 
と、大地はこたえました。 
 おなかがたまらなくすいてきたヤカラーは、しかたなくしょうちしました。 
 ヤカラーは、朝から夕方まで地面をたがやし、タネをまいて、大地のために働くことになりました。 
 そのかわりヤカラーが、木の実や草の実をたべることを、大地はゆるしてくれました。 
 しごとがおわってから、さんぽをしたりうたったり、「おれは王だ」と、さけぶこともゆるしてくれました。 
 こうしてヤカラーは、大地とはなかよくくらせるようになりましたが、海や山とは、なかなか、なかなおりできません。 
 けれども、それからなん年もなん年も、かぞえきれない年がすぎました。 
 人間は、もう一人ぼっちではありません。 
 海や山とも、うまくはなしあえるようになりました。 
 こうして人間は、生きるためにはもらうだけではなくて、働かなくてはいけないことを知ったのです。 
      おしまい 
          
         
  | 
      | 
     |