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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話 
       
          
         
力比べ 
インドの昔話 → インドの国情報 
      
      
       むかしむかし、ペルシア(→いまのイラン)に、ものすごい力もちの男がいました。 
   ある日のこと、この力もちは、インドには自分よりも、もっとつよい力もちがいるといううわさを耳にしました。 
   これを聞いた力もちは、すぐさまそのインド人と力くらべをしてみようと思いました。 
   そこで町に行って十万袋の小麦粉を買うと、それをおべんとうのかわりに頭の上に乗せて、でかけました。 
   日のくれるころ、インドの国ざかいにある湖につきました。 
   力もちはひどくのどがかわいたので、湖の岸にひざまずいて、ズズズーッと、水を一口すいこみました。 
   すると湖の水が、半分以上もへってしまいました。 
   それからこんどは持ってきた小麦粉を、のこった水の中に入れてかきまぜました。 
   力もちはそれを全部たべると、その場でねむってしまいました。 
   さて、湖には毎朝のように、一ぴきの大きなゾウが水を飲みにきます。 
   その朝も、やってきたのですが、おどろいたことに、けさは湖の水がありません。 
  (どうしよう?) 
   ゾウは、こまってしまいました。 
   ガッカリして帰ろうとしたとき、グッスリとねこんでいる力もちを見つけました。 
   そのおなかの大きいこと。 
  (さては、あいつが飲みほしてしまったんだな) 
  と、ゾウは気がついて、カンカンにおこりました。 
   そしてゾウは、 
  「えいっ!」 
  と、ばかりに、力もちの頭をふみつけました。 
   すると力もちは目を覚まして、ゾウにふみつけられた頭をポリポリとかくと、 
  「頭をくすぐったのは、お前だな」 
  と、いって、ゾウをこわきにかかえあげました。 
   それからゾウをふろしきにつつんで、ヒョイと肩にかつぎました。 
   それからしばらく歩いて、インドの力もちの家にたどりつきました。 
   ペルシアの力もちは、大きな声でよびかけました。 
  「でてこい、インドの力もち。俺さまが投げたおしてやるから、かかってこい!」 
   すると中から、おかみさんがこたえました。 
  「あいにく、いまはるすですよ。あの人は、山へたきぎをとりにいきました」 
  「そうか。じゃ、またくる。これは、ほんの手みやげだよ」 
   ペルシアの力もちはそういって、庭の中へかついできたゾウのつつみをポイッと投げこみました。 
   すると中から、おかみさんの声が聞こえました。 
  「あれまあ、おっかさん。ごらんよ。お客さんがネズミを投げこんでいったよ」 
  「ほっておおき。ネズミの一ぴきぐらい、つまみだせばいいじゃないか」 
   ペルシアの力もちはビックリしましたが、すぐに聞きちがえたのだと思いました。 
  (まさか、ゾウがネズミに見えるはずはない) 
   力もちは、あいてをさがしに山にむかって歩いていきました。 
   インドの力もちは、すぐに見つかりました。 
   なにしろ頭の上に、貨車千両ほどもたきぎを乗っけているのですから。 
  「これは、まったくすばらしい相手だ」 
  と、ペルシアの力もちはかんしんして、よびとめました。 
  「インドの力もちよ。きみのうわさを聞いて、ぼくはわざわざペルシアから力くらべにきたんだ」 
  「そうか、それはうれしい」 
  と、インドの力もちはこたえました。 
  「しかし、ここじゃ場所がない。それに、手をたたいてくれる見物人もいなくては、つまらない」 
  「それじゃ、見物人はきみのお母さんにたのむとしよう」 
  「よしきた。おっかさーん、ここにきて、力くらべを見てくれ!」 
   すると、お母さんがこたえました。 
  「だめ、だめ。手がはなせないよ。わたしのラクダを娘がぬすんだので、いま追っかけてるところだよ。でもなんなら、わたしの手のひらの上でやったらどうだい? それなら、追っかけながら見てやれるからね」 
   そこで二人は、お母さんの手のひらの上にとび乗ると、とっくみあいをはじめました。 
   このありさまを遠くのほうから見ていた娘は、これは自分をつかまえるために、お母さんが兵隊をやとってきたのだと思いました。 
   それで娘はヒョイと手をのばすと、お母さんも、二人の力もちも、つれていた百六十ぴきのラクダも、みんなひっくるめて大きなふろしきにつつんでしまいました。 
   そしてそれを頭の上に乗せると、ドンドンと歩いていきました。 
   そのうちに、娘はおなかがすいてきたので、ちかくにあった町のパン屋を町ごとそっくりつつんで、また歩きだしました。 
   やがて、ひろい畑にでました。 
   畑には、大きなスイカがなっています。 
   娘はそれをわってなかみをたべると、持ってきた荷物をスイカの皮の中におしこみました。 
   そしてそれをまくらにして、いつのまにかグッスリとねむってしまいました。 
   ねむっているうちに、大洪水がおしよせました。 
   世の中のものは、なにもかもおし流されてしまいました。 
   ただスイカだけが、プカプカと水の上にういていました。 
   スイカはうきながら、海へながれていきました。 
   やがて洪水がひいて、世の中はすっかりかわりました。 
   スイカが岸辺へうちあげられて、中からぞろぞろと人間がはいだしてきました。 
   お母さんや、二人の力もちや、ラクダや、パン屋や、そのほかいろいろなものがでてきました。 
   新しい世界はこうして、この人たちからはじまったのです。 
   つまりこれが、人間の先祖です。 
   そしてスイカの中でくらしたので、人間の大きさは、だいたいおなじようになったということです。 
      おしまい           
         
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