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      福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話 
       
          
         
トウモロコシドロボウ 
メキシコの昔話 → メキシコの国情報 
      
      
       むかしむかし、メキシコのある村に、お金持のお百姓がいました。 
   お百姓は広いトウモロコシ畑を持っていて、毎年、たくさんの卜ウモロコシをとり入れました。 
   ところがある年、トウモ口コシ畑にドロボウがはいったのです。 
   さて、このお百姓には、三人の息子がおりました。 
   一番上の息子は、なまけものです。 
   二番目の息子は、いばりやで、いつも人をバカにしていました。 
   三番目の息子は、どういう子どもか、よくわかりませんでした。 
   お百姓は、三人の息子をよんで、 
  「だれでもいい。ドロボウを見つけてくれ。見つけたものに、わしの財産(ざいさん)をゆずろう」 
  と、いいました。 
   まず、一番上の息子が畑ヘいきました。 
   息子は、ごちそうをつめたカゴを持って、鉄砲(てっぽう)を肩にかけて、プラリプラリとあくびをしながらでかけました。 
   庭の井戸(いど)までくると、 
  「ちょっとぐらい、ねむってもだいじょうぶだろう」 
  と、いって、腰をおろしました。 
   そして、すぐにいびきをかいて、ねむってしまいましたが、やがて、 
  「わたしを、トウモロコシ畑ヘつれていってください。ドロボウをつかまえるおてつだいをします」 
  と、いう、カエルの声で目をさましました。 
  「なんだと。このきたならしい、ろくでなしめ。おまえなんかに、ドロボウがつかまるものか」 
  と、いって、息子はカエルを、井戸の中へ投げこんでしまいました。 
   それから、トウモロコシ畑へでかけました。 
   けれどもまた、いねむりをはじめました。 
   夜があけて、目がさめたときには、トウモロコシはもうぬすまれていました。 
   こんどは、二番目の息子の番です。 
   二番目の息子は、マメをつめたカゴとヒョウタンを持って出かけました。 
   井戸まできて、ヒョウタンに水をくもうとしたとき、カエルが近づいてきていいました。 
  「わたしを、トウモロコシ畑ヘつれていってください。ドロボウをつかまえるおてつだいをしますから」 
   息子はビックリして、ヒョウタンをおとしそうになりました。 
  「おい、だまれ。おどかすな」 
  と、いって、カエルにかまわずいってしまいました。 
   そしてトウモロコシ畑にすわりこんで、ドロボウをまちました。 
   まもなく、鳥の羽ばたきが聞こえました。 
   尾のながい、きれいな鳥が、月のかがやく空にあらわれたかと思うと、スーッと、トウモロコシ畑におりてきました。 
   これこそ、ドロボウにちがいありません。 
   二番目の息子は、鉄砲のねらいをさだめて、 
   ズドン! 
  と、うちました。 
   鳥はさけび声をあげてにげていき、あとには羽が二枚のこりました。 
   にいさんは羽をひろいあげて、朝になるまでまちました。 
   けれども鳥は、それきりあらわれませんでした。 
   二番目の息子も、ドロボウをつかまえることはできませんでした。 
   つぎに三番目の息子が、ドロボウをつかまえにいきたいと、いいだしました。 
  「おれにできなかったんだ。おまえにできるはずがないじゃないか」 
  と、一番上のにいさんがいいました。 
   それでも三番目の息子は、パンだけ持ってでかけました。 
   井戸までくると、腰をおろしてパンをたべました。 
   すると、 
  「こんにちは」 
  と、カエルの声がしました。 
   息子は、カエルを手のひらにのせて、 
  「パンがほしいのかい? とても、おいしく焼けてるよ」 
   カエルはパンをもらって、たベおわるといいました。 
  「わたしを、トウモロコシ畑ヘつれていってください。おてつだいしますよ」 
  「ああ、いいとも。いっしょにおいで」 
  と、三番目の息子はいいました。 
   するとカエルがいいました。 
  「この井戸は魔法の井戸です。この中に、なんでもねがいごとをいってごらんなさい。きっと、かなえられますよ」 
   三番目の息子は、井戸の中へ、 
  「トウモロコシドロボウが、つかまえられますように。美しいお嫁さんが、きてくれますように。そして、まどがいっぱいついている家に、住めますように」 
  と、ねがいごとをいいました。 
   三番目の息子とカエルは、いっしょにトウモロコシ畑ヘいきました。 
   まもなく、美しい鳥がトウモロコシ畑にまいおりてきました。 
   息子は鉄砲をむけて、その鳥をうとうとしましたが、 
  「あっ、うってはいけません!」 
  と、カエルがさけびました。 
   三番目の息子は、鉄砲を下におきました。 
   すると美しい鳥は、頭の上を飛びながら、 
  「わたしは、魔法をかけられて鳥になった娘です。おなかがすいて、トウモロコシをいただきました」 
  と、うたいました。 
   カエルがケロケロと歌をうたうと、美しい鳥が、いつのまにかきれいな娘のすがたにかわりました。 
  「さあ、あなたのお嫁さんですよ」 
  と、カエルがいいました。 
   三番目の息子は、娘の手をとって、お父さんのところへ帰りました。 
   するとどうでしょう。 
   お父さんの家のとなりに、まどのたくさんついている、大きな家がたっているではありませんか。 
  「さあ、これがあなたの家ですよ」 
  と、カエルがいいました。 
   三番目の息子がお父さんのところヘいくと、一番上のにいさんは、 
  「こんなことなら、カエルを井戸ヘ投げこまなきゃよかった」 
  と、いって、くやしがりました。 
   二番目のにいさんは、 
  「カエルの歌を、聞いてやるんだったなあ」 
  と、くやしがりました。 
   お父さんはやくそくどおり、三番目の息子に財産をやりました。 
   三番目の息子は、美しいお嫁さんとカエルといっしょに、たのしくくらしました。 
      おしまい           
         
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