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7月31日の世界の昔話
  
  
  
  青ひげ
  ペローの童話 → ペローの童話の詳細
 むかしむかし、大きなおやしきに、ひとりの男の人がすんでいました。
 この人は、お屋敷のくらの中にお金や宝石をたくさんもち、いろいろなところに別荘をもっている大金持ちです。
 でも、青いひげがモジャモジャとはえた、とてもこわい顔をしているので、人々から『青ひげ』とよばれてきらわれていました。
 そしてもうひとつ、青ひげには、ヘんなうわさがありました。
 それは、今までに六人もおくさんをもらったのに、みんなどこかへいなくなってしまうという、うわさでした。
 ある時、青ひげは近くにすむ美しい娘を、お嫁さんにしたいと考えました。
 そこで娘とそのお母さんや兄弟たち、それに友だちもよんで、おいしいごちそうをしてもてなしました。
 みんなは別荘にとまり、何日も何日も、散歩やダンスやつりをして、楽しくすごしました。
 そのあいだ、青ひげはいっしょうけんめいニコニコと、やさしい顔をしていました。
 しばらくすると、娘は青ひげのお嫁さんになってもいいと言いました。
 青ひげは大喜びで、すぐに結婚式(けっこんしき)をあげたのです。
 ある日、青ひげはおくさんをよんでいいました。
  「わたしは、明日から大切な用があって旅に出かけることになった。だから、あなたにやしきのカギをあずけていこう」
 そういって、カギのたくさんついているたばをとり出しました。
  「これは、家具の入っているくらのカギ。これは、金や銀の食器の棚のカギ。これは、宝石箱のカギ。わたしのるすのあいだ、たいくつだったら、このやしきにいくら友だちをよんでもかまわないし、どの部屋に入ってもかまわないよ。ただし・・・」
 青ひげは急にこわい目をして、おくさんをジロリと見ました。
  「この小さなカギだけは、使わないように」
  「はい。でも、これはいったいどこのカギなのですか?」
 おくさんがたずねると、青ひげはこたえました。
  「ろうかのつきあたりの小さな部屋のカギだ。いいな。その部屋には、ぜったいに入ってはいけないぞ」
  「わかりました」
 こうして青ひげは、つぎの日、出かけていきました。
 おくさんは、はじめのうちは友だちをよんで楽しくすごしていましたが、そのうち、たいくつになってきました。
 すると、あのいけないといわれた部屋に入りたくて、たまらなくなりました。
  「だめ、いけないわ。
 ・・・いけないかしら。
 ・・・少しだけなら。
 ・・・大丈夫よね。
 ・・・大丈夫よ」
 おくさんは、小さなカギで小さな部屋のドアを開けてしまいました。
  「あっ!」
 中を見たおくさんは、ドアのところに立ったまま、ガタガタとふるえだしました。
 部屋のかべには、たくさんの女の人の死体がぶらさがり、ゆかには血がベッタリと、こびりついていたのです。
 それはみんな、青ひげのまえのおくさんたちでした。
  「ただいま」
 そこへ、青ひげが帰ってきたのです。
 おくさんはビックリして、カギをゆかに落としてしまいました。
 おくさんはあわててカギをひろうと、ドアにカギをかけて青ひげのいる玄関にいきました。
  「お、お、おかえりなさい」
 おくさんを見た青ひげは、ニッコリ笑いました。
  「やあ、すっかり、おそくなってしまったね。・・・おや、どうしたんだい? そんなにふるえて」
  「い、いえ、べ、べつに」
 ガタガタとふるえるおくさんを見た青ひげは、急にこわい顔になっていいました。
  「わたしていたカギを、出してもらおう」
  「はっ、はい」
 おくさんがふるえる手で差し出したカギを見た青ひげは、キッ! と、おくさんをにらみつけました。
 カギには、あの部屋で落としたときについた血が付いていたのです。
  「・・・いけないといったのに、やっぱり見たんだな」
  「ゆるしてください、ゆるしてください」
 おくさんは青ひげのまえにひざまずいて、ないてあやまりました。
 でも青ひげは、ゆるしてくれません。
  「おまえは悪い女だ。・・・殺してやる!」
  「ゆるしてください、ゆるしてください」
  「・・・では、お祈りの時間だけまってやろう」
  「ああ、神さま・・・」
 おくさんは、必死で神さまにお祈りします。
 青ひげは刀をぬくと、お祈りをしているおくさんの首をきろうとしました。
 ちょうどその時、玄関のドアがひらいて、ふたりの男の人が入ってきました。
 おくさんのふたりのお兄さんたちが、運よく妹をたずねてきたのです。
 ふたりは妹が首をきられそうなのをしって、すぐに青ひげにとびかかって、殺してしまいました。
 死んだ青ひげには、ほかに、しんせきがいなかったので、お屋敷や別荘、お金や宝石は、ぜんぶおくさんのものになりました。
   
おくさんは、それからはずっと幸せにくらしたということです。
おしまい