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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 縁結びの神さま
2010年 3月1日の新作昔話
縁結びの神さま
兵庫県の民話 → 兵庫県情報
むかしから、出雲の神さまは、縁結びの神さまで有名でした。
出雲の神さまは、毎日毎日、朝から晩まで何千組もの縁結びをしているのです。
そして朝のうちは、
「うむ、あそこの息子は性格が良いから、ここの娘がいいだろう。あの息子は金持ちだから、反対にこの貧乏な家の娘と」
と、あれこれ考えながら縁結びをするのですが、それが昼頃になると、
「この息子は、この娘。あの娘は、この息子」
と、少しいい加減になり、やがて夕方になると、
「あれとこれ。これとあれ」
と、適当になってしまうのです。
こうして朝のうちに縁結びされた夫婦は、末永く幸せに暮らすのですが、夕方に縁結びされた夫婦は、不幸な結果となってしまうのです。
ところで縁結びの神さまにも娘がいて、今年で三十歳にもなるのですが、どこからも嫁に欲しいと声がかかりません。
そこで娘は、父親に腹を立てて言いました。
「お父さん。他人の事よりも実の娘の方が大事じゃないの! あたしもいい年よ。早くあたしの相手を決めて下さい!」
すると縁結びの神さまは、気まずそうに言いました。
「う、う―ん。実はな、もう、とっくに決まっていたのじゃ。じゃが、つい夕方に決めてしまい、あまりにも不似合いな縁になってしまったのじゃ。それで、今まで、言いそびれて・・・」
「お父さんが不似合いだと思っても、お嫁に行くのはあたしです! さあ、どこの誰が相手なのか、教えて下さい!」
「う、うーん。それなら言うが、実は遠い播磨の国(はりまのくに→兵庫県)の山奥で炭焼きをしておる、ひどく貧乏な男じゃ」
「わかりました。あたしは、もうこれ以上、待つ気はありません。どんなに遠くても、どんなに貧乏でもいいから、今すぐ、その人のところへ行きます!」
娘はそう言うと旅の用意をして、旦那さんのいる山奥へと出かけました。
そして何日も旅をして、ついに旦那さんになる炭焼きの男を見つけると、こう言いました。
「あたしは、あなたの嫁になる者です。今日から、ここに置いてもらいます」
それを聞いた炭焼きの男は、びっくりです。
「いきなりそんな事を言われても、おれは知らんぞ。第一、おれは貧乏で、嫁をもらうどころではない。それに、お前さんみたいなきれいな人は、もっと良い家に行くべきじゃ」
「いいえ、あなたが何と言おうと、これは父、・・・縁結びの神さまが決めた事です。では、ここに荷物を置かせてもらいます」
「そんな事を言われても・・・」
炭焼きの男は反対しましたが、娘は強引に嫁となって住み着いてしまいました。
さて、もともと貧乏な家に二人が暮らす事になったので、家の米はたちまちなくなってしまいました。
米びつをひっくり返しても、一粒の米も残っていません。
「あなた、お米がなくなりました。どうしましょう?」
嫁が言うと、男は困った顔で言いました。
「米は、いつも炭と取り替えておるんじゃ。今焼いている炭が焼き上がるまで、我慢するしかないのだが、炭が焼き上がるまで、まだまだ時間がかかるし」
すると娘は、持ってきた嫁入り道具の中から金の粒を出して言いました。
「それなら、これでお米を買ってきて下さい」
「なんじゃ? こんな物で、米と換えてくれるのか?」
今まで、お金を見た事がない男には、不思議でなりません。
けれど嫁が言うのなら間違いないだろうと、男はその金の粒を持って山を下りていきました。
そして町へ出る途中の丸木橋で、男は金の小粒を一粒落としてしまったのです。
「あっ、しまった」
男が川をのぞいてみると、金の小粒をエサと間違えた小魚が、金の小粒を突き始めました。
「こりゃ、面白い」
男は楽しくなって、持ってきた金の小粒を次々とばらまき始めました。
そして、手ぶらで戻ってきた男に、嫁が尋ねました。
「あら? あなた、お米はどうしました?」
「うん、実はお前のくれた粒は、みんな橋の下の魚にくれてやったんだ」
「まあ、なんともったいない! あれがあれば、何でも買えるのに」
嫁が呆れていると、男は、
「それはすまんかった。しかし、あんな物でよければ、炭焼き窯(がま)の横に、なんぼでもあるから、明日取ってきてやろう」
と、言うのです。
次の日、嫁が男について炭焼き窯に行ってみると、何と炭焼き窯の横は金山で、あちこちに金の塊がゴロゴロ転がっているのです。
嫁は、びっくりして言いました。
「あなた。これだけあれば、もう、炭焼きで貧乏をする事はありません。これからは、幸せに暮らしましょう」
こうして二人は、それから末永く幸せに暮らしたのです。
縁結びの神さまが決めた縁談は、決して間違えはありません。
例え夕方に決められた縁談でも、夫婦で力を合わせれば、必ず幸せになれるのです。
おしまい
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