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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 弘法大師の焼き栗 弘法大師話 
      2011年 6月20日の新作昔話 
          
                  
         
        弘法大師の焼き栗 
  弘法大師の不思議な話 → 弘法大師について 
      
       むかしむかし、ある農家の子どもたちが、庭先で栗を焼いて食べていました。 
        「わあ、おいしそうだね。お兄ちゃん、もう食べてもいい?」 
        「ああ、いいよ。でも、熱いから気をつけなよ」 
         そこへ、旅の途中の弘法大師が通りかかりました。 
         大師は、そんな子どもたちにほほえむと、そのまま通り過ぎようとしましたが、子どもたちの前を通った時に、 
        「ぐーーーっ」 
        と、お腹の虫が鳴いてしまいました。 
         それを聞いた子どもたちは、笑いながら大師に言いました。 
        「あはははは。お坊さん、お腹が空いているのかい?」 
         大師は、恥ずかしそうに頭をかきながら言いました。 
        「はい。実は昨日から、何も食べていないのです」 
         すると子どもたちは、大師に焼いた栗を差し出して言いました。 
        「これを食べなよ。まだまだあるから、大丈夫だよ」 
        「それでは、遠慮なしに頂くとしましょう」 
         こうして大師は、子どもたちに焼き栗をごちそうなりました。 
         
         焼き栗を食べ終わった大師は、まっ黒に焼け過ぎて子どもたちが捨てた焼き栗を拾うと、それを地面にうめました。 
        「あれ? お坊さん、焼いた栗を植えても、芽は出ないよ」 
         大師はそれには答えずニッコリほほえむと、子どもたちに焼き栗のお礼を言って、また旅へと出かけていきました。 
         
         さて、その次の年の事です。 
         不思議な事に大師が植えた焼き栗から芽が出て、立派な栗の木へと育ったのです。 
         そしてさらに不思議な事に、この栗の木に出来た栗の実は、片側半分が焼けたように色が変わっていたのです。 
         
         子どもたちから話を聞いた人々は、この栗を『弘法の焼き栗』と呼んだそうです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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