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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > ヤシの油
2014年10月20日の新作昔話
ヤシの油
リビアの昔話 → リビアの情報
むかしむかし、世界がまだ出来上がったばかりの頃、地上には一本のヤシの木が生えていました。
そのヤシの木は知恵の木と呼ばれ、人々は困った事があるとこのヤシの木にお祈りをして、困った事を解決するお告げをもらうのです。
そしてこのヤシの木には、むやみに登ってはいけないと言い伝えられていました。
ある日の事、とても美しい若者と、とても美しい恋人がいましたが、この美しい若者がイタズラ好きで、恋人が止めるのも聞かずに、このヤシの木に登ってしまったのです。
「何だ、登ってみても、何も起きないじゃないか」
若者がそう言っていると、突然、ヤシの木に付いているヤシの実が大きな口を開けて、びっくりしている若者をパクリと飲み込んでしまったのです。
これを見ていた若者の恋人は、すぐにヤシの木に泣いて謝りました。
「ごめんなさい。あの人が登るというのを、止められなかったわたしがいけないのです。わたしは死んでもかまいません。どうか、あの人を返してください」
するとヤシの実はブルッと震えて、大きく口を開くと若者を返してくれたのです。
「あなた、無事だったのね!」
若者と恋人は抱き合って無事を喜びましたが、やがて二人は抱き合ったまま溶けていき、ヤシの油になってしまいました。
それからこの地方では、ヤシの油を顔に塗ると美しくなると言われているそうです。
おしまい
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