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    福娘童話集 > きょうの新作昔話 >にあう 
      2015年1月12日の新作昔話 
          
          
         
        にあう 
  徳島県の民話 → 徳島県の情報 
       むかしむかし、ある村に、とてもきれいな娘さんがいました。 
         その娘さんの家の近くに、仕事もしないで遊んでばかりのなまけ者の男がいます。 
         困った事にこのなまけ者の男が、娘さんを好きになったのです。 
         男は娘さんの家へ行くと、娘さんのお父さんに言いました。 
        「どうか、娘さんをおらの嫁にくれ」 
         男がなまけ者と知っているお父さんは、男をにらみつけて言いました。 
        「とんでもない! お前みたいななまけ者に、大切な娘をやるもんか!」 
        「これからは真面目に働くから、娘さんをおらにくれ」 
        「駄目だ! 帰れ!」 
        「そこを何とか」 
         お父さんがいくら断っても、男は引き下がりません。 
        「いい加減にしろ! だいたい、わしの可愛い娘が、お前なんぞに似合うものか!」 
         お父さんが怒鳴ると、男は負けずに言い返しました。 
        「それなら、誰かが似合うと言ったら、娘さんをくれるのか?」 
        「何を馬鹿な事を。どこを探したって、うちの娘にお前が似合うなんていう者はおらんわい。何なら、村中に聞いてみろ」 
         こう言ってお父さんは、男を家の外に追い出しました。 
         でも、男はあきらめません。 
        「なに、村中を探せば、一人ぐらいは似合うと言う奴がいるさ」 
         男はさっそく、村中を歩き回ってさっきの話しをしました。 
         すると誰に聞いても、同じ事を言います。 
        「お前には、似合わん」 
         中にはお腹をかかえて、大笑い出す者もいます。 
        「日本中を探したって、お前の嫁になる女なんているものか」 
        「・・・ちくしょう! こうなったら、あの手で行こう」 
         
         男は野良猫を一匹捕まえると、ふところに入れて娘さんの家へ行きました。 
         そして男は家に飛び込むなり、いろりのふちにいた娘さんの横に座りました。 
         これには、お父さんもお母さんもカンカンに怒りました。 
        「なんてずうずうしい奴だ! すぐに娘から離れろ!」 
        「まあ、待ってくれ。娘さんがおらの嫁に似合うという者がおったら、娘さんをくれると言っただろう?」 
        「まだ、そんな事を言っているのか! そんな者がいるはずないだろう! さあ、もう帰ってくれ!」 
         すると男は、ふところから猫を出してひざの上に乗せました。 
         そして猫が逃げない様に体を押さえながら、猫のお尻を思いきりつねりました。 
         すると猫はびっくりして、 
        「ニァーウ(にあう)! ニァーウ(にあう)!」 
        と、鳴いたのです。 
        「さあ、似合うと言ったぞ。だから、娘さんをおらの嫁にくれ」 
        「・・・・・・」 
        「・・・・・・」 
        「・・・・・・」 
       お父さんもお母さんも娘さんも、あきれて物も言えませんでした。 
       そしてもちろん、男はお父さんに追い出されてしまいました。 
      おしまい 
         
          
         
        
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