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    2015年 5月11日の新作昔話 
        
        
       
カバの王さまの名前 
コンゴ民主共和国の昔話 → コンゴ民主共和国の情報 
      
       むかしむかし、カバは川ではなく陸に住んでいて、ときどき動物たちを集めてのパーティーを開きました。 
 さて、そのカバの王さまはイサンチムと言う名前で、まるまると太った、とても可愛いお嫁さんもいます。 
 でも、動物たちはイサンチムの事を、 
「カバの王さま」 
と、言うだけで、だれも本当の名前を呼んではくれません。 
(せっかく、イサンチムと言う、いい名前があるのに、どうしてだれも呼ばないのだ) 
 王さまは、くやしくてたまりません。 
 そこである日、パーティーを開いて言いました。 
「お前たちは、いつもごちそうを食べにくるのに、だれもわしの名前を言わない。さあ、だれでもいいから、わしの名前を言ってごらん」 
「・・・・・・」 
「・・・・・・」 
「・・・・・・」 
 みんなは顔を見合わせるばかりで、だれも王さまの名前を言えません。 
 それどころか、 
「へええ、カバの王さまに名前があるなんて、今まで知らなかったよ。それで、なんて名前?」 
と、言う始末です。 
 それを聞いて、王さまはすっかり腹を立てました。 
「もういい。名前がわからないのなら、さっさと帰ってくれ!」 
 ごちそうを食べ損なった動物たちは、がっかりです。 
 テーブルの上に残されたごちそうを見ながら、一匹のカメが言いました。 
「王さま、もし、本当の名前を言ったら、どうします?」 
「ああ、わしの名前を言う事が出来たら、わしはここを出て、川の中で暮らすさ」 
 王さまは思わず、そんな事を言ってしまいました。 
「では近いうちに、もう一度パーティーを開いてください。その時には、必ず王さまの名前を言いますから」 
 カメは、急いで帰っていきました。 
 さて次の日の朝、カメが川のそばの草むらに隠れていると、カバの王さまがお嫁さんを連れてやってきました。 
 王さまとお嫁さんは、毎朝、川で水浴びをするのです。 
 二人が水浴びをしている間に、カメはあちこちに小さな穴を掘りました。 
 さて、しばらくして水浴びをすませた二人が帰ろうとした時、カメが掘った小さな穴に、お嫁さんがつまずいてしまいました。 
 でも、先を歩く王さまは、それに気づかずに行ってしまいます。 
「待って、イサンチム」 
 お嫁さんが、思わず叫びました。 
 王さま振り返ると、すぐにお嫁さんを助けました。 
 さて、次のパーティーが開かれたとき、カメが大きな声で言いました。 
「王さまの名前はイサンチムです。イサンチム王、ばんざーい!」 
 やっと名前を呼ばれた王は、大喜びです。 
 そこで動物たちに、たくさんのごちそうを出してやりました。 
 でもパーティーが終わると、王さまはお嫁さんを連れて、約束通り川へおりていきました。 
 こうしてカバは、川の中で暮らすようになったのです。 
      おしまい 
         
          
         
        
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