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      2015年 7月20日の新作昔話 
        
        
       
サバ売りと山姥 
新潟県の民話 → 新潟県情報 
       
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      投稿者 「もちがたる。」 
       むかしむかし、サバ売りが山里へサバを売りに行くと、いきなり山から山姥が出てきて、 
「サバは、わしが全部貰うぞ」 
と、言ってきたのです。 
 サバ売りはびっくりしましたが、山姥でも、お客はお客です。 
 サバ売りは山姥にニッコリ微笑むと、 
「これは山姥さん。ありがとうございます」 
と、魚のカゴを地面に下ろしました。 
 すると山姥は、生のサバを手づかみでバリバリと食べ始めたのです。 
 そして最後の一匹を食べ終わると、満足そうにお腹をさすりました。 
「ふーっ、食った食った。うまいサバだった」 
 その様子を、サバ売りはびっくりしながら見ていましたが、やがて気を取り直すと山姥に手を出して言いました。 
「あの、サバのお代金をお願いします」 
 すると山姥は、 
「金なんかあるものか! ぐだぐだ言うと、お前も食ってしまうぞ!」 
「ひぇーーっ」 
 驚いたサバ売りは、悲鳴をあげながら逃げていきました。 
 そして逃げて逃げて、ある一軒の家に飛び込んで助けを求めましたが、その家には誰もいません。 
 そこでサバ売りは、その家の天井裏へと隠れたのですが、それからしばらくすると、あの山姥が家に入って来て、囲炉裏端にゴロンと横になると、いびきをかいて寝てしまったのです。 
(しまった。よりにもよって、山姥の家に逃げ込んだとは) 
 天井裏のサバ売りは、降りるにも降りられずに困っていると、いびきをかいていた山姥が目を覚まして言いました。 
「ああ、喉が渇いたな。さて、甘酒(あまざけ)をわかそうか? 辛酒(からざけ)をわかそうか?」 
 これを聞いた天井裏のサバ売りは、思わず、 
「甘酒をわかせ」 
と、言いました。 
 すると山姥は、 
「おや? 今、囲炉裏の火の神さまが『甘酒をわかせ』と、言ったな。では、甘酒を鍋にわかそう」 
と、囲炉裏に鍋をかけて、甘酒をわかし始めました。 
 でも、待っているうちにコックリコックリと、居眠りを始めました。 
 それを見た、天井裏のサバ売りは、 
「うまそうな甘酒だな。ひとつ、いただくとするか」 
と、天井裏からアシの棒を一本抜き出すと、それをストロー代わりにしてチューチューと飲んでしまったのです。 
 それからしばらくして、目を覚ました山姥が、 
「さあ、甘酒を飲むとするか」 
と、鍋の中をのぞいてみたのですが、鍋の中には甘酒がありません。 
 山姥は首をかしげながら、 
「おや? 甘酒がないぞ? ・・・そうか、火の神さまが飲んでしまわれたのだな。それじゃあ、今度は餅を焼いて食おうか。それとも団子を焼こか?」 
と、言ったので、天井裏のサバ売りは、 
「餅を焼け」 
と、言いました。 
 すると山姥は、 
「おや? 火の神さまが、『餅を焼け』と、言ったな。では、餅を焼こう」 
と、餅を焼き始めました。 
 そして待っているうちに、また、コックリ、コックリと居眠りを始めたのです。 
 やがて餅が焼けてきて、いい香りと共にプクーとふくらんできました。 
 すると天井裏のサバ売りは、アシの棒で焼けた餅を突き刺して、パクリパクリと餅を全部食べてしまったのです。 
 それからしばらくすると、やがて目を覚ました山姥が、 
「さあ、餅は焼けたかな?」 
と、見てみると、餅が一つもありません。 
 山姥は首をかしげながら、 
「おや? 餅がないぞ? ・・・そうか、火の神さまが食べてしまわれたのだな。それじゃあ、もう寝るとするか。さて、木のひつぎで寝ようか? 石のひつぎで寝ようか?」 
と、言ったので、天井裏のサバ売りは、 
「木のひつぎで寝ろ」 
と、言いました。 
 すると山姥は、 
「おや? 火の神さまが、『木のひつぎで寝ろ』と、言ったな。では、木のひつぎで寝よう」 
と、木のひつぎに入って、すぐにイビキをかきはじめました。 
 するとサバ売りは天井裏からおりてきて、囲炉裏で鍋にお湯をグラグラと沸かし、山姥が寝ている木のひつぎに、きりでキリキリと穴を開けました。 
 するとその音に、山姥が目を覚ましましたが、 
「おや? キリキリ虫が鳴いているな。・・・そうか、明日は天気がいいのか」 
と、言って、また寝てしまいました。 
 そして、穴を開け終えたサバ売りは、囲炉裏でグラグラと沸かした鍋のお湯を持ってくると、さっき開けた穴の中に注ぎ込んだのです。 
 すると、木のひつぎの中の山姥は、 
「あち、あち、あちちちち!」 
と、悲鳴を上げながら、大やけどをして死んでしまったということです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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