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2023年5月15日の新作昔話

黒いつばきの花
投稿者 「カボスひろし」  大分県産カボスひろしTV

黒いつばきの花
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「カボスひろし」  大分県産カボスひろしTV

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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

大人も眠れる睡眠朗読】日本昔話集10 優しいとんち話 元NHKフリーアナの絵本読み聞かせ

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
椿の折り紙つばき

♪音声配信(html5)
音声 Judy

 むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。

黒いつばきの花

 さて、国のお殿さまが吉四六さんのうわさを聞いて、家来たちに言いました。

黒いつばきの花

「いくらとんちの名人でも、わしをだます事は出来まい。さっそく、連れてまいれ」
 そこで家来が、吉四六さんを連れて来ました。

黒いつばきの花

 吉四六さんが殿さまの前に行くと、殿さまは後ろにある刀を指差して言いました。

黒いつばきの花

「お前はとんちの名人だそうだが、わしをうまくだませたらこの刀をやろう。だが失敗したら、お前の首をもらうぞ」
 それを聞いて、吉四六さんはびっくりです。

黒いつばきの花

「と、とんでもない。殿さまをだますなんて。どうか、お許し下さい」
 吉四六さんは泣きそうな声であやまりましたが、でも殿さまは承知しません。
 そこで吉四六さんは、殿さまに言いました。
「わたしには、殿さまをだます事は出来ません。いさぎよく首を切られましょう。だけど首を切られる前に、一つだけお願いがあります」
「わかった。言ってみろ」

黒いつばきの花

「実は今朝、わたしの家の庭にまっ黒なつばきの花が咲きました。わたしがこんな事になったのも、縁起の悪い花が咲いたからです。せめてこの花を叩き切ってから、首を切られたいと思います」

黒いつばきの花

「何? まっ黒なつばきの花だと。そんな花が、咲くはずがない。わしをだまそうたって、そうはいかないぞ」
「いいえ、本当です。うそだとおっしゃるなら、取ってきましょうか?」

黒いつばきの花

「よし、すぐに取って来い」
 そこで吉四六さんは、急いで家に帰って行きました。
 でも黒いつばきの花なんか、どこにも咲いていません。
 吉四六さんは、そのまま殿さまのところへ戻って、

黒いつばきの花

「すみません。とても硬い木で、のこぎりやオノでは切れません。どうか、その刀を貸して下さい」
と、言いました。
 すると殿さまは、イライラして、

黒いつばきの花

「よし、貸してやろう。その代わりにすぐ切り取って来ないと、首をはねるぞ!」
 さて、刀を貸してもらった吉四六さんは大喜びで帰って行き、それっきり殿さまの所へは戻ってはきませんでした。

 次の日、殿さまが怒って家来を吉四六さんの家に行かせると、吉四六さんはすました顔で言いました。

黒いつばきの花

「黒いつばきの花なんて、咲くわけないでしょう。約束通り、お殿さまをだまして刀を頂きましたよ」
 それを聞いた殿さまは、
「しまった。見事にやられたわ」

黒いつばきの花

と、 怒るにも怒れず、とてもくやしがったそうです。

おしまい

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