2023年5月29日の新作昔話
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。 ある日の事、吉四六さんは畑でとれた小麦(こむぎ)を村はずれの水車(すいしゃ)小屋に持って行って、粉にしてもらいました。 「これで、うまいうどんでも作って食べよう」 ごきげんで家に帰ろうとすると、突然うわばみ(→大蛇)が現れたのです。 うわばみは大きな口を開けて、吉四六さんを飲み込むつもりです。 「うへぇっ!」 いかに吉四六さんがとんちの名人でも、うわばみにとんちは通じません。 吉四六さんが慌てて逃げ出すと、うわばみも追いかけて来ました。 さいわい松の木があったので、吉四六さんは松の木によじ登りましたが、うわばみはなおもしっこく追いかけて来て、大きな口をアングリと開けました。 「こりゃあ、もう駄目だ。なむあみだぶつ」 その時です。 ガタガタと震えていた吉四六さんのふところから、大事にしまっていた粉の包みが落ちてしまい、それがうわばみの口にすっぽりと入りました。 びっくりしたうわばみは、自慢のキバで粉の包みを噛み破ったからたまりません。 うわばみは、せきとくしゃみをしているうちに粉を喉に詰まらせて、バッタリと死んでしまったのです。 「粉の包み一つでうわばみを退治するとは、さすがは吉四六さんじゃ」 (まったく、今回はただ逃げていただけで、とんちを使うひまもなかった。・・・おもしろくねえ) おしまい |
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