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2024年7月22日の新作昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
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イラスト : にしがきゆうこ おはなしあっつこっつ
旅人の夢比べ
フランスの昔話 → フランスの情報
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投稿者 「おはなしあっつこっつ」 おはなしあっつこっつ
むかしむかし、二人の商人と一人のお百姓が、三人一緒に都へ向かっていなかの道を歩いていました。
お昼になったので、三人は食事をしようと腰をおろしました。
ところが食べ物は、小さなパンが一つだけです。
そこで、一人が言いました。
「こんな小さなパンを、三人で分けてもしかたがないな。どうだろう、何かの勝負をして、勝った者が一人で食べるのは」
「それは良い考えだけど、どんな勝負をするんだ?」
「そうだな、これから三人で昼寝をして、一番素晴らしい夢(ゆめ)を見た者が勝ちにしよう」
「よし、それでいこう」
さっそく三人は木のかげへ行って、昼寝を始めました。
しばらくたって、昼寝からさめた三人は、
「ああ、よく寝たな。さて、お互いにどんな素晴らしい夢を見たかな」
と、夢の話しをはじめました。
まずは、おしゃべり上手な商人の一人が言いました。
「わしは、天国へ行った夢を見たよ。
天国には、天の使いの鳥に乗って行ったんだ。
天国はキラキラしていて、どこもかしこも金色に美しく光っていた。
そして素晴らしい音楽が聞こえ、きれいな花がいっぱいに咲いていた。
花からは心をあらわれるような、よい香りがただよっていた。
本当に、素晴らしい夢だったよ」
するともう一人の商人も、負けじと言いました。
「わたしの夢は、地獄へ行った夢さ。
地獄はやっぱり、すごいところだった。
こわい顔の地獄の王さまや家来のオニたちが、とてもいばっていた。
そして悪い事をした人々が、オニたちにいじめられて苦しそうだったよ」
もう一人の商人も、地獄の夢を上手に話しました。
「さあ今度は、あんたの番だよ」
言われたお百姓は、
「うん・・・」
と、言ったきりで、しばらくだまっていました。
ところがふいにお百姓は三人の前に置いてあるパンを取ると、一人でムシャムシャと食べてしまいました。
「あれっ?」
「おやっ?」
ほかの二人はびっくりすると、怒り出しました。
「誰の夢が一番素晴らしいか、まだ決まっていないぞ! なのにパンを食べてしまうとは、どういう事だ?!」
するとお百姓は、すました顔で言いました。
「うん、わたしはね、あんたたちが天国や地獄へ行く夢を見たんだよ。
天国や地獄へ行った人は、もう戻ってこないだろうと思ってね、わたしは残ったパンを食べたんだ」
この思いがけない答えに、ほかの二人は、
「これはやられたな」
と、ちょっぴりくやしそうな顔をしましたが、すぐに笑い出しました。
「天国や地獄は遠くても、都まではもうすぐだ。さあはやく都へ行って、うまい物でも食べよう」
そう言うと三人は、また旅を続けました。
おしまい
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