百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第25話

朱の盤の化け物

朱の盤の化け物

♪音声配信
TIME 3分50秒 音声  『Web団 零点』
TIME 4分49秒 音声 ことのは

 むかしむかし、旅の侍が一人、村はずれのさみしい野原にさしかかりました。
 このあたりには、『朱の盤(しゅのばん)』と呼ばれる妖怪(ようかい)が出るとのうわさです。

「ああ、日は暮れてくるし、心細いなあ。化け物に会わねばよいが」
 侍が足をはやめると、
「しばらく、お待ちくださらんか」
と、後ろから、呼び止める者がいます。
 侍が恐る恐る振り返ると、そこにいたのは自分と同じような旅の侍でした。
 あみがさをかぶっているので顔はわかりませんが、侍に間違いありません。
「さしつかえなければ、ご一緒願いたいのですが」
「そうですか。実はわしも道連れが欲しかったのです。このあたりには『朱の盤』とかいう化け物が出るとのうわさですから。・・・聞いた事がありませんか?」
 すると、後からきた侍が、
「ああ、聞いた事がありますよ。なんでもそれは、こんな化け物だそうで」
と、言って、かぶっていたあみがさを、パッと取りました。
 するとそこから現れたのは、碁盤(ごばん)の様に角張っている、朱(しゅ)に染まった、まっ赤な顔で、髪の毛はまるで針金の様にごつごつしており、大きな口は耳までさけています。
 そしてひたいには、角が生えていました。
 これはまさしく、朱の盤の化け物です。
 侍は、
「うーん!」
と、目をまわして、気絶してしまいました。
 そしてしばらくしてから、はっと我にかえった侍は、無我夢中で野原を駆け抜けて行き、やがて見えてきた家に飛び込みました。
「お頼み申します!」
 するとその家には、おかみさんが一人いるだけでした。
「まあまあ、いかがなされたのですか?」
「まずは水を一杯、飲ませていただきたい」
「はい、ただいまさしあげますよ」
 おかみさんは台所の水がめのひしゃくをとって、侍に渡しました。
 一気にそれを飲んだ侍は、おかみさんに話しました。
「実は、野原で道連れが出来たと思ったら、朱の盤の化け物だったのです。」
「おや、それは恐ろしい物に会いましたね。朱の盤に会うと、魂を抜かれると言いますから。・・・して、その朱の盤というのは、もしや、こんな顔ではありませんでしたか?」
 おかみさんは、ひょいっと顔をあげました。
 そこにあったのは、朱に染まった四角い顔に、耳までさけた口に、針金の様な髪の毛に、ひたいの角です。
「うーん!」
 侍は、またまた気絶してしまい、次の日になって我にかえりましたが、朱の盤に魂を抜かれたのか、三日後に死んでしまったということです。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界