百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第31話

二人の幽霊

二人の幽霊

♪音声配信
音声 創作活動のサイト 『Web団 零点』

 むかしむかし、ある町に、色白で気の弱い、新兵衛という侍がいました。
 弓も刀も駄目で、仲間からは腰抜け呼ばわりされていました。

 さてこの町に、元は町一番の長者屋敷だったのですが、今は荒れ果てて幽霊が出るとの噂の屋敷がありました。
 ある日、仲間の侍たちから、
「どんなに強い侍でも、一晩とおれんというぞ。お主なんか、門をくぐる事さえも出来まい。あはははははっ」
と、馬鹿にされた新兵衛は、
「そこまで言われては、何が何でも泊まってやるわ!」
と、家に帰って腹ごしらえをすると、おっかなびっくり幽霊屋敷へ出かけていきました。

 草がぼうぼうの庭に入っていくと、さっそく人魂が西と東から一つずつ、すすーっと飛んで来ました。
「うひゃーっ、人魂が二つも!」
 新兵衛は逃げ出したいのを我慢して、恐る恐る屋敷に入りました。
 やがて、ろうそくの火がひとゆれしたかと思うと、
「うらめしやあ・・・」
と、髪の長い女の幽霊が、銀のお金の入った箱を抱いて現れました。
「で、出たー!」
 新兵衛が震え上がりながらも何とかこらえていると、カギを手にした男の幽霊も現れました。
 男女の幽霊が一緒に出て来るなんて、よほどの訳があるのでしょう。
 新兵衛が思い切って、訳を聞いてみると、
「わたしたち二人は、この屋敷で働いていた者同士です。結婚の約束をしたのですが、主人がそれを許してくれません」
と、男の幽霊が語り始めました。
「そこで屋敷のお金を持ち出して、よその町へ逃げて暮らそうとしたのですが、主人に見つかってしまい、二人とも斬り殺されてしまいました。
 そして別々のところに埋められ、今もそのままなのです。
 わたしたちはそのうらみから、屋敷の主人にたたってやりましたが、未だに成仏出来ません。
 どうかこのお金でお坊さんを呼んで、成仏させてください」
「・・・そうだったのか。わかった」
 新兵衛が引き受けると、男女の幽霊は人魂になって、すーっと出ていきました。
 座敷には銀のお金がずっしり入った箱と、その箱のカギが残されています。

 あくる朝、新兵衛は幽霊屋敷の出来事を寺の和尚さんに伝えて、二人の供養をしてもらいました。
 この話しを聞いた、この国の殿さまは、
「腰抜けどころか、新兵衛の働きは侍の鏡であるぞ。ほめてとらす」
と、褒美として、その屋敷を与えたそうです。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界