百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第78話

幽霊船

幽霊船

 むかしむかし、いく人かの漁師が船にのりこんで、とおくの海へカツオをとりにでかけました。
 ところがめざす海へつかないうち、夜になってしまいました。
 帰ろうにも向かい風が強くて、船は思うように進めません。
「おや、あれはなんだ?」
 見張りの男が、向かい風に逆らいながら近づいてくる船を見つけました。
 船べりにも、ほづなにも、青白い火が数え切れないほどともっています。
「ゆ、幽霊船だぞ!」
 それは万灯船(まんとうせん)とよばれる幽霊船で、このあたりの海にだけ現れるのです。
「いいか。ぜったいに、口をきいてはいかんぞ」
「それに、『ひしゃくで水をくれ』といわれても、ひしゃくの底を抜いてわたさんと、そのひしゃくで船に水をかけられて、船をしずめられるぞ」
 漁師たちはもう、生きた心地がしません。
 幽霊船は滑るように近づいてきて、へさきを並べました。
 船べりには、ひたいに三角のきれをつけた幽霊たちが、
「水をくれ〜」
「たのむから、ま水を飲ませてくれ〜」
と、かぼそい声をしぼり出して言います。
 幽霊は、男だけではありません。
 女や子どもたちも、まじっています。
 これを見た船頭は、漁師たちにいいつけました。
「おい。水のたるを五つ六つ、持ってこい」
「なにをいうだ! とんでもねえ!」
 漁師たちは、反対しましたが、
「海の上で飲み水がないくらい、つらいことはない。相手が幽霊船だとしても、ここはなさけをかけてやろうではないか」
と、船頭はそういって、幽霊船になわを投げ渡して水のたるを次々とつるし、幽霊たちにたぐらせました。
 船べりの幽霊たちは、うれしそうにいくつもの水だるを受け取ると、ゆっくりとその場をはなれていきました。
 やがて風もおさまって、朝にはすっかり波のおだやかな海になりました。
 そして漁を始めたところ、たちまちの大漁です。
 それからというもの、この船頭の船は漁に出るたびに、必ず大漁だったそうです。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界